スポーツライター玉木正之氏の知的誠実さを問う

日本のサッカーカルチャーについてさまざま論じていきたいと思っています。

玉木正之はデタラメである。セルジオ越後のサッカー評論はパワハラである。
中田英寿はワールドクラスではない。大谷翔平の二刀流は珍記録にすぎない。
本田圭佑は二代目中田英寿である。天皇杯は元日決勝を卒業するべきである。
今福龍太や細川周平の現代思想系サッカー批評は贔屓の引き倒しでしかない。etc.

リバプールの遠藤航は地上波で報道されない?
 テレビのスポーツニュースは、投打「二刀流」の日本人メジャーリーガー・大谷翔平、あるいはプロ野球や高校野球のゴリ押し報道をしていない。それはアンチ野球派のサッカーファンのバイアス(偏見)だ。マスコミは、サッカー英プレミアリーグの遠藤航の活躍も、バスケットボールNBAの八村塁の活躍もきちんと報じている……。

 ……と、弁明する満田哲彦氏(元電通本社オリパラ室営推部長、元JFAマーケティング担当部長、現「株式会社ミッションスポーツ」CEO)の発言の一部が、サッカーサイト「FOOTBALL TRIBE JAPAN」に「リバプール遠藤航は地上波で報道されない? 元電通関係者反論〈久保建英・大谷は…〉」と題して、2024年3月12日に載った。
 これを受けて、当ブログはSNS「X」(旧Twitter)に「思うところ」をいろいろ書いた。

 しかし、この満田哲彦氏の発言は「FOOTBALL TRIBE JAPAN」が独自に取材したものではなく、実際には満田哲彦氏自身の「X」に投稿されたポストの引用であった。このサッカーサイトは、独自に取材をぜず、「X」で見つけたネタを元に記事を書いていると言われる悪名高きメディアである。当ブログがこれで反応したのはとても良くないことであった。

 そこで、満田哲彦の実際の「X」のポストの詳細をよく読み、よく吟味して、あらためてブログで「思うところ」を述べようと思っていた(体調不良などで遅くなった)。すると、あにはからんや、当ブログは「X」上で満田哲彦氏にブロックされていたのである。

 なぜか? 満田哲彦氏の言い分では、野球をdisっているサッカーファン、サッカーをdisっている野球ファンは「スポーツの敵」であり、そのような輩とは関わりあいたくない(ブロックする)というのだ。当ブログは「スポーツの敵」と認定されてしまった(もっとも、当ブログは野球それ自体がつまらないと書いた覚えはないのだが)。

 とまれ、ブロックされたことはいたしかたない。不完全で全く的外れな指摘も書くだろうが、記憶と「FOOTBALL TRIBE JAPAN」に引用された部分に頼って、当ブログは満田哲彦氏のスポーツ報道観に関して「思うところ」を書いていくことにする。

「公共の電波」と大谷翔平報道の公益性
 とにかく、野球以外のスポーツのファンは、欧州サッカーの遠藤航や三笘薫、久保建英、バスケットボールNBAの八村塁や渡邊雄太……といった、野球以外の日本人アスリートの活躍が、地上波テレビではほとんど報道されないと憤懣している。
 一方、『株式会社ミッションスポーツ』の満田哲彦CEO(元JFAマーケティング担当部長・元電通本社オリパラ室営推部長)の見解は異なる。満田氏は「そろそろ『日本のメディアは報じない』という大きな主語からの脱却を」と切り出すと、遠藤の活躍ぶりが〔2004年3月〕11日のテレビ朝日系『報道ステーション』でも報じられたことに言及。

 同番組の平均視聴者数を700~800万人、到達人数を1500~2000万人と見積もった上で、「報道ステーションだけで、700万人ほど遠藤航選手の報道を見てる」と私見を披露。

 他の地上波メディアでも「久保、三笘、八村塁(レイカーズ)などのことは、ずっと報じ続けている」として、「日本のメディアは野球ゴリ押し、というバイアス〔偏見〕がたぶんこれからも続く。でも、本当に日本のメディアをチェックしてる?」と疑問を投げかけた。

Shota(文)/FOOTBALL TRIBE JAPAN「リバプール遠藤航は地上波で報道されない? 元電通関係者反論〈久保建英・大谷は…〉」(2024.03.12)より
 テレビは浦和レッズのACL優勝もきちんと報じていた。だから気にしなくていい……と、満田哲彦氏は「X」に書いていたと記憶しているが(曖昧)、しかし、それは「足を踏んづけている側の論理」ではないか。

 いやいや、いやいや、満田哲彦氏よ。申し訳程度に報道される遠藤航や八村塁と比べると、スポーツ報道における野球報道の量、特に大谷翔平報道の量は格段に多い。満田哲彦氏は、報じた・報じないだけで事を矮小化してはいないか。

 なるほど、テレビは遠藤航らの活躍を報道してはいる。だが、そこには俗に「大谷翔平15分、遠藤航15秒」と揶揄される野球(大谷翔平)とサッカーその他のスポーツ(遠藤航ら)との「報道格差」がある。しかも、量だけでなくその質(内容)も問題だ。遠藤航の試合は公式戦の大一番、対して大谷翔平は練習試合なのに……である。

 一説に、海外サッカーの試合のハイライト映像は、短時間でも数万円から10数万円の高額な放映権料が必要とされ、翻ってアメリカのメジャーリーグベースボール(MLB)の映像の権利は各テレビ局が保有しており、いくら放送しても問題ないのだという。
  • 参照:週刊女性PRIME「《大谷は15分、遠藤は15秒》大谷翔平の〈練習試合〉を連日特集のテレビ局にサッカーファンから不満の声、の〈歴史的〉活躍の遠藤航をスルーの背景にの〈放映権〉問題」(2024.3.14)https://www.jprime.jp/articles/-/31213
 公平を期すために、この話も紹介した。もっとも、野球以外のスポーツをスポーツニュースで取り扱う方法などいくらでもあるのだが。いずれにせよ……。

 片や、サッカーの遠藤航や三笘薫、久保建英、バスケットボールの八村塁や渡邊雄太ら、野球以外のスポーツの話題は、テレビでは通常のスポーツニュースの枠内で淡々とテレビは報じる。

 こなた、野球の話題は、特に大谷翔平の話題は、些細なことまで大々的に、過剰な時間を割いて、時として政治、経済、社会、国際情勢、自然災害などの重要で公益性がある話題を差し置いて、一般ニュースで、まるで国家的大事であるかのように、朝鮮中央テレビが北の将軍様を称揚するかのようにテレビは報じる。

 テレビ局は、国民の財産である、いわゆる「公共の電波」を格安で使っており、公共放送たるNHKはもちろん、民間放送(民放)もまた、その放送内容に一定の公益性が求められる。

 大谷翔平がホームラン王を獲った、リーグMVPを獲ったというのであれば、それはオリンピック(五輪)やワールドカップ(W杯)といった世界大会で、日本人選手や日本代表が活躍したなどと同等の話題であり、一般ニュース枠で扱ってもいいかもしれない。

 しかし、大谷翔平は今日も(練習試合で)ホームラン打ちましただとか、結婚しましただとか、飼い犬ととじゃれあっています……みたいな由無し事(よしなしごと)を、毎日毎日一般ニュース枠を使って報道するのはおかしい。

 それはテレビの公益性から逸脱している。また、テレビにおける野球報道の量はその公益性に見合っていない。

 テレビの野球報道の過剰さ、大谷翔平報道の過剰さを批判する人たちを、満田哲彦氏は「大きな主語」という表現を用いて否定する(「X」で多用している)。どうやら氏は、この「大きな主語」という言い回しが大好きで、この言葉を使えば何か高尚なことを言ったと思い込んでいるらしい。

 しかし、テレビにとっては「野球」や「大谷翔平」こそが「大きな主語」ではないのか?

テレビの「野球ゴリ押し」には裏付けがある
 Jリーグが1994年にスタートして30余年。サッカーが日本のスポーツ界の王座に就いたわけではないが、その間、日本人のスポーツへの趣味・嗜好は多様化し、以前は王座にあった野球は、その地位からは降格している。もはや野球は国民的な了解事項ではない。

 そういえば、満田哲彦氏も、日本人のスポーツ人気は、野球やサッカーや大相撲など、競技ごとにセグメント化(区分化、部分化の意味)していると「X」で書いていた記憶がある(曖昧)。大谷翔平の人気も本来はセグメント的なものだ。2023年に彼が出場したメジャーリーグの試合は、実は大して視聴率が取れていない。

 しかし、テレビのスポーツ報道はセグメント化していない。

 マスコミは、特にテレビは、日本で野球がスポーツの王様だった「昭和」の時代(~1989年)そのままの感覚で、スポーツ報道といえば野球の情報を過剰な量と内容で放送する。まずは、それ自体が「ゴリ押し」であり、非野球ファンの不評を買っている。

 だが、これすら満田哲彦氏は認めたくはないらしい。

 満田哲彦氏は「日本のメディアは野球ゴリ押し、というバイアス〔偏見〕がたぶんこれからも続く。でも、本当に日本のメディアをチェックしてる?」と言うけれども、日本のメディア(テレビ)が野球をゴリ押しするのは、バイアス(偏見)でもフィクション(虚構)でもなく、あからさまな世の中の実際の在り様である。

 これには一定の裏付けがある。株式会社エム・データが提供する「2023年TVニュースランキングを発表」では、総合ランキングの1位は「ロシア・ウクライナ情勢」の133時間28分18秒(時事問題)、2位が「大谷翔平・異次元の活躍」の121時間35分58秒(スポーツ)、3位は「侍ジャパン・3大会ぶりにWBC制覇」の119時間06分03秒(スポーツ)。
  • 参照:エム・データ「2023年TVニュースランキングを発表」(2023/12/12)https://mdata.tv/info/20231212_01/
エム・データ「総合~2023年TVニュースランキング」(2023年12月12日)
エム・データ「総合~2023年TVニュースランキング」(2023年12月12日)

エム・データ「スポーツ~2023年TVニュースランキング」(2023年12月12日)
エム・データ「スポーツ~2023年TVニュースランキング」(2023年12月12日)

 この上位3つだけが100時間代、そのうち実に2つが野球ネタなのである。大谷翔平と侍ジャパン(野球日本代表)兼ワールドベースボールクラシック(WBC)の話題だけで、「ロシア・ウクライナ情勢」の倍近くも時間を取っている! しかし、総合ランキングのトップ10を見てみると、野球以外にもっと報じるべきニュースはたくさんある。

 これなどを見ていると、テレビは、大谷翔平と侍ジャパンの活躍の話題をしつこく報道することで、日本社会における野球のプレゼンス(サッカーなど他の競技に対抗して)を維持しようとしている、要はゴリ押ししているとしか思えなくなってくる。

 それでも、満田哲彦氏はテレビのスポーツ報道は不公平ではないと言う。
 なお満田〔哲彦〕氏は、大谷〔翔平〕の情報が様々な地上波番組で扱われる理由も説明。「大谷情報は、その社会的情報まで話題となっている」と主張した上で、W杯やなでしこジャパン対北朝鮮(パリ五輪最終予選)に関しても「社会的情報レベル」と位置付けている。

Shota(文)/FOOTBALL TRIBE JAPAN「リバプール遠藤航は地上波で報道されない? 元電通関係者反論〈久保建英・大谷は…〉」(2024.03.12)より
 氏が言う「大谷翔平の社会的情報」が、テレビ(公共の電波)の公益性をはるかに逸脱したものだということは、既に述べた。また、2023年WBCの時の侍ジャパンも事前の報道は凄まじいものがあった。またWBCでの侍ジャパンの活躍は、放映権を持っているテレビ局(テレビ朝日とTBS)の垣根を超えて好意的に報道していた。

 翻って、2022年サッカーW杯カタール大会(日本代表=森保ジャパン含む)における事前の報道は、全く寂しいものがあった。この大会の放映権を持たない民放テレビ局は、森保ジャパンが強国ドイツに劇的な逆転勝ちをして、渋々(嫌々?)サッカーの話題を取り上げ始めたのであった。

 また、2024年パリ五輪アジア予選における「なでしこジャパン」(サッカー日本女子代表)の事前の報道も寂しいものがあった(しかし、パリ五輪本大会出場を決めた日本vs北朝鮮戦は、地上波のNHK総合テレビで相応の視聴率を取った)。

 報道の量・質に明らかに格差があって、野球とサッカーが同じ「社会的情報レベル」だとはとても言えない

マスコミによる「野球防衛軍」は虚構である?
 日本のマスコミ企業(一般紙や地上波テレビ、スポーツ紙)は、例えば朝日新聞が夏の甲子園(高校野球の大会)を主催していたり、読売新聞が読売ジャイアンツ(プロ野球球団)を経営していたり……等々、野球の興行に自ら関わっている。

 また、相互に監視、批評しあう関係にあるべきマスコミ企業は、いわゆる(海外では禁じられている)クロスオーナーシップというもので、「一般紙/地上波テレビ/スポーツ紙」が資本的に系列化されている(例えば「読売新聞/日本テレビ/スポーツ報知」といった具合に)。

 加えて、アメリカ合衆国(米国)のメジャーリーグベースボール(MLB)に莫大な放映権料を支払い、これをBSや地上波で放送し、毎年、春・夏の甲子園=高校野球の大会を地上波で全試合放送している公共放送のNHKがある。

 つまり、日本のマスコミ企業は総体として野球とは利害関係者の間柄で、一蓮托生、癒着している。野球は、日本のマスコミ企業総体にとって「自社コンテンツ」なのである。

 そんな日本のマスコミにとって、あくまで日本のナンバーワンスポーツは「野球」でなければならない。新しく台頭したサッカーやバスケットボールであってはならない。野球人気は低落しているが、日本人の「野球離れ」は絶対に食い止めなければならない。

 だから、マスコミは野球をゴリ押しし、サッカーその他のスポーツを冷遇する。それは構造的な問題だ……といった説(噂)がある。

 しかし、満田哲彦氏はこの説(噂)をも「X」で否定していたと記憶している(曖昧)。氏は、いわゆる「野球防衛軍」の存在を否定しているのである。
  • 参照:プロ野球視聴率関連@wiki 視スレ辞典 や行「野球防衛軍」【やきゅうぼうえいぐん】https://w.atwiki.jp/maruko1192/pages/13.html
 2023年WBCでは読売新聞が日本ラウンドの興行権を持っていながら、実際に放送したのはクロスオーナーシップ的な関係の薄い、テレビ朝日やTBSだったということ。また、東京ヤクルト・スワローズと関係の深いフジテレビは、特に同所属のスター選手・村上宗隆ばかりを好意的に取り上げているわけではないことなどを、その理由としていたと記憶している(曖昧)。

 しかし、そもそも、玉木正之(スポーツライター)が常々批判してきたように、マスコミ企業がスポーツの大会を主催したり、スポーツチームを種有したりすること自体が問題なのである。

 玉木正之の場合は、それが「スポーツジャーナリズムの批判精神の欠落する」ことが主な理由であったが、その中には、マスコミ(テレビ)自身の利害関係のために、野球の話題を人気の実態以上に過剰に放送すること(ゴリ押し)も入っているのだと、思い当たった。

 実際に日本のマスコミ企業が高校野球の大会を主催していたり、プロ野球球団を所有していたりする以上、マスコミ(テレビ)はサッカーその他の競技を蔑ろにして野球(特に大谷翔平)をゴリ押ししているという風説は、単なる陰謀論や被害妄想では終わらない。

 マスコミ(テレビ)の「野球防衛」(野球ゴリ押し)とは、特定のテレビ局が自局(自社)の利益に直結させるために、特定の球団や選手や大会を積極的に取り上げる……という性格のものではない。むしろ、それは業界総体のコンセンサス(総意)である。

 日本の高度成長、経済大国華やかなりしその昔、論壇では「日本株式会社論」という論説が持てはやされていた。日本の国民経済をひとつの会社と見なす論説である。そこでは、例えばこんなことが語られていた。

 家庭電機メーカーでいえば、日本には松下(パナソニック)・日立・東芝・ソニーなどが存在する。だが、仮に外国の同業者と競争しなければならなくなると、ひとつの会社のように結束し(日本株式会社)、業界総体のコンセンサスが形成される。そこでは特定のメーカーが突出することはない。

 日本のテレビ局でも、例えば、1993年の「ドーハの悲劇」の時のサッカーW杯アジア最終予選。サッカー日本代表=オフト・ジャパンは5試合を闘ったが、その地上波の中継局は、日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京が、きれいにそれぞれ1試合ずつ担当した(衛星波はNHKが担当)。

 これは一種の談合ではないか? ……と、田中康夫(作家、元長野県知事)は批判していたが、この横並びこそ、日本特有の業界総体のコンセンサスである。業界総体で利益を分け合い、ひとつのテレビ局が突出することはない。

 また「公共の電波」を免許によって使用しているテレビ局、少なくとも東京のキー局に関しては「潰れる」心配もほとんどないこともある。だから過激な競争は必要ない。

 マスコミ(テレビ)の野球ゴリ押しもこれと似たようなものだ。それは業界総体のコンセンサス(総意)である。

 2023年、WBCでの侍ジャパンの活躍は、放映権を持っているテレビ局(テレビ朝日とTBS)の垣根を超えて、テレビは好意的に報道していた。それは、前掲の株式会社エム・データ提供「2023年TVニュースランキングを発表」でも、まず間違いない。

 翻って、2022年サッカーW杯カタール大会(日本代表=森保ジャパン含む)における事前報道は、全く寂しいものがあった。この大会の放映権を持たない民放テレビ局は、森保ジャパンが強国ドイツに劇的な逆転勝ちをして、渋々(嫌々?)サッカーの話題を取り上げ始めた。

クリロナに「大谷翔平を知っていますか?」と愚問する
 日本のテレビは野球を「ゴリ押し」している……という見方はサッカーファンのバイアス(偏見)であると言う満田哲彦氏。しかし、その割にはテレビのスポーツ報道には、野球を人気随一のスポーツに見せたいかのような、不自然な現象が多い。

 【その1:WBC=侍ジャパンの不自然な視聴率分割】野球日本代表=侍ジャパンのテレビ中継の番組時間帯は、低視聴率を回避するために、または高視聴率を叩き出すために不自然なタイミングで分割される。

 例えば、2023年3月6日の強化試合「阪神タイガースvs侍ジャパン」の中継では、午後6時11分からの74分間は世帯視聴率15.5%、個人視聴率は9.4%。それ以降の125分間が世帯視聴率20.2%で、個人視聴率は12.9%。このように侍ジャパンの中継視聴率は分割されており、近年はこの分割された一部の時間帯の高視聴率が大々的に報じられている。
  • 参照:ケン高田/アサ芸プラス「WBC強化試合〈20.2%高視聴率〉をサッカー派が揶揄する〈分割ジャパン〉って?」https://www.asagei.com/249763
 サッカー日本代表は、たとえW杯本大会でもこのようなことはない。

 番組時間帯の分割までして侍ジャパンの、すなわち野球の視聴率を高く見せることは、視聴率調査という統計への信頼を損なう行為である。テレビ局は、そうまでして野球の視聴率(≒人気)の方がサッカーの視聴率(≒人気)より高いことを誇示したいのだろうか?

 視聴率調査をする会社「ビデオリサーチ」は「第三者機関の調査会社として設立されました」と、自身の公式サイトで謳っているにもかかわらず……でありながら、このような作為的なことを、(野球と癒着した?)テレビはやるのである。
  • 参照:ビデオリサーチ「沿革」https://www.videor.co.jp/company/history.html
 これでは日本のテレビは野球をゴリ押ししていないという意見は苦しい。

 【その2:クリロナに「大谷翔平はご存じですか?」と愚問をする】2023年7月に来日したサッカーのスーパースター クリスティアーノ・ロナウド(クリロナ、ポルトガル)に、日本テレビは「大谷翔平をご存じですか?」などと愚かな質問をして炎上した。
  • 参照:川瀬大輔/アサ芸プラス「クリスチアーノ・ロナウドに〈大谷翔平を知っているか〉バカ質問の日本テレビには〈明石家さんまの前科〉があった」(2023年7月31日)https://www.asagei.com/excerpt/273423
クリロナに「大谷翔平はご存じですか?」と質問する馬鹿インタビュー(1)
クリロナに「大谷翔平をご存じですか?」と愚かな質問をした日テレ(1)

 当然、クリロナはこの質問に「No!」と答えた。

クリロナに「大谷翔平はご存じですか?」と質問する馬鹿インタビュー(2)
クリロナに「大谷翔平をご存じですか?」と愚かな質問をした日テレ(2)

 クリロナに「大谷翔平はスゴイ!」と言わせたい。そして「大谷翔平は世界的なスーパースターだ!」と喧伝したいだけの愚かな質問である。こんなことをやっているから、日本のテレビは野球を(大谷翔平を)ゴリ押ししていると言われるのである。

 クリロナに何か質問するのであれば、むしろ、サッカー日本代表で欧州サッカーで活躍するの三笘薫や久保建英らについての感想だろう。せっかく時間を割いてくれたクリロナには、全く無駄なことを質問をした。申し訳ない気持ちになる。

 【その3:大谷翔平の記者会見7000万人視聴とデマ】日本のテレビは、大谷翔平がロサンゼルス・ドジャースに移籍が決まった時の記者会見を「全米で7000万人が同時視聴」「全世界では1億人以上が同時視聴」、バイデン米大統領の一般教書演説の視聴者数2730万人を上回った……などという喧伝を行った。

 もちろん、これはデマである。

大谷翔平デマ_記者会見視聴者7000万人(1)
大谷翔平デマ、記者会見視聴者7000万人(1)

 野球というスポーツのアメリカにおけるプレゼンス、世界のおけるプレゼンスを考えたら、そんな数字は在り得ない。

大谷翔平デマ_記者会見視聴者7000万人(2)
大谷翔平デマ、記者会見視聴者7000万人(2)

 実際は4万8000人程度だったらしい。日本のテレビはこのデマを撤回していない。

 こういう例は、まだまだあるが割愛する。繰り返しになるが、こんなことをやっているから、日本のテレビは野球を(大谷翔平を)ゴリ押ししていると噂されるのだ。

両方に「いい顔」をしなければならない満田哲彦氏
 日本のテレビは「野球ゴリ押し」という説(噂)。これはバイアス(偏見)ではない。

 まあ、「株式会社ミッションスポーツ」CEOという立場上、満田哲彦氏はサッカー界にも野球界にも「いい顔」をしなければならない。だから火消し(?)に走った。

 しかし、この満田哲彦氏の「火消し」は、テレビを中心に情報を収集している人たちには通用しそうだが、インターネットやSNSを中心に情報収集している人たち……の就中(なかんずく)サッカーファンをかえって疑心暗鬼にしてしまう。





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 以前、大谷翔平が在籍していたロサンゼルス・エンゼルス(Los Angeles Angels)。

 ロサンゼルスにあるから(厳密にはLA近郊のアナハイムだが)、ロサンゼルス・エンゼルス。これはすぐに納得できる。

 それでは、大谷翔平が今季からプレーする、同じLAのロサンゼルス・ドジャース(Los Angeles Dodgers)とは?

 インターネットが無かった昔、紙の英和辞典で「dodge」を引くと「(…を)さっと避ける,(…に)ひらりと身をかわす,巧みに回避する,ごまかす」という動詞が出てきて意味がよく分からなかった。
  • 参照:Weblio「dodgeとは 意味・読み方・使い方」https://ejje.weblio.jp/content/dodge
 しかし、今では「Dodgers」の名前の由来も広く知られるようになった。
  • 参照:What an Interesting World「ロサンゼルス・ドジャースはなぜドジャースというのか? その意味,由来についての詳細」(2018.1.19)https://tmbi-joho.com/2018/01/19/dodgers-origin/
  • 参照:雨宿り「[LAD]ロサンゼルス・ドジャースの歴史」(2023年12月24日)https://sports.yahoo.co.jp/official/detail/2023122100080-spnaviow
 この「ロサンゼルス・ドジャースの名前の由来」のひとくち話に、スポーツライターのあの玉木正之氏も参戦している。
 ロサンゼルス・ドジャースという球団の、「Dodgers」の意味は? という質問で、ヒントとして「Dodgers の dodge とは、ドッジボール(Dodgeball)のこと」と書いておいたので……〔略〕

 ……〔略〕「ドッジボールの名称は英語の dodge(素早く身をかわす)からきている」。つまりドッジボールとは、「ボールをぶつける遊び」ではなく、「ボールを避ける遊び」なのだ。そして、ドジャース(Dodgers)と、人を表す -er が付くと、「避ける人」という意味になる。

 これはロサンゼルス・ドジャースが、かつてはニューヨークのブルックリン区で生まれた野球チームであることに由来している。当時のブルックリンは、家が建て込んだ、道路の狭い下町で、しかもトロリーバス(路面電車)が走っていた。

 そこでブルックリンの子供たちが道路で遊んでいると、親たちはいつも子供たちに向かって、トロリーバスや自動車を「Dodge! Dodge!(避けろ! 避けろ!)」と叫んでいた。そこで、ブルックリンの子供たちはいつしか、「ドジャー(Dodger)」と呼ばれるようになったのであった。

 そのブルックリンに野球チームが創設されたのは、メジャーリーグの前身であるアメリカン・アソシエーションという組織の野球リーグが生まれたとき。最初(1884年)は、チーム名をアトランティックスとしていたのだが、その後、スーパーバス、トロリードジャース、ロビンスといった名称に変わり、1932年から、ブルックリン・ドジャース(ブルックリンの子供たち)が正式名称となった。

 広々としたカリフォルニアのロサンゼルスに本拠地を移したあとも、つまり子どもたちが道路で遊ぶこともなくなり、自動車を避けなくてもよくなったあとも、ドジャース(ブルックリンの子供たち)という名称は残したのだった。

 ……と説明が長くなってしまったが、この Dodgers という球団名の意味を知っている日本人はほとんど皆無……とまでは言わないまでも、ごく少数なのではないだろうか。

 オフサイドの説明のときにも書いたように、日本人はスポーツを体育として学んだ結果として、身体を鍛えることしか考えなくなっている。われわれ日本人は、スポーツに関するわからないことや言葉を、疑問にも思わず、調べようともしない癖が付いてしまっているのだ。

玉木正之「野球チームの名前の由来~ロサンゼルス・ドジャースって〈避ける〉チーム?」@『スポーツって、なんだ?』#5(春陽堂書店)https://www.shunyodo.co.jp/blog/2018/12/sports_5/
 この説明は、先に掲げた他の説明と大きな違いはない。ブルックリン・ドジャースを「ブルックリンの子供たち」(ブルックリンっ子)と意訳したのは、なかなか素晴らしいセンスだ。

 もっとも、自動車のバスと鉄道の路面電車を混同している間の抜けたところは、玉木正之氏の「あるある」であるが(爆)。

 日本プロ野球(NPB)の球団の愛称は、タイガース、ドラゴンズ、ライオンズ、スワローズなど「強い,美しい,格好いい,速い etc.」といったイメージで命名する。

 一方、アメリカのプロスポーツは、英語が母語でもあるから、このブルックリン・ドジャース同様、ボルチモア・オリオールズやカンザスシティ・ロイヤルズのように、本拠地の土地柄に馴染んだ愛称を付ける。

 「日本人はスポーツを体育として学んだ結果として……」云々というのは、玉木正之氏の説教臭いところだが、どうせ、ドッジボールとドジャースの共通性を持ち出すならば、サッカーで同じ語源を持つ「ドジング」(dodging)という概念があることを書いたらよかったのではないか?

 サッカーで1対1のボール奪取の場面で「ひらりと身をかわす」技術のことを「ドジング」という。
  • 参照:シェアトレ「[1vs1のディフェンスの基礎]ドジングの練習」https://www.sharetr-soccer.com/posts/view/1052
 もっとも、玉木正之氏は知らなかったようだが(爆)

 玉木正之氏は、Google検索やWikipedia日本語版で調べが付く程度の内容を、ドヤ顔で紹介しては得意がっている事が多い。それでも通用する、幸せな立場にいるスポーツライターが玉木正之氏なのである。

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メッシ+ノイアー=大谷翔平???
 投・打「二刀流」の日本人メジャーリーガー・大谷翔平をサッカーに例えたら? FWリオネル・メッシと、GKマヌエル・ノイアーという両ポジションのスーパースターを兼ねるようなもの?
  • 参照:THE DIGEST「大谷翔平の〈価値〉に欧州メディアが脱帽! 稀有な才能を独特表現で絶賛〈メッシとノイアーが1人の人間に〉」(2023.03.31)https://thedigestweb.com/baseball/detail/id=66690
 ……などという問いはほとんど意味がない。サッカーにおいて、このふたつが両立することは無いからだ。

 その昔、コロンビア代表(ナシオナルメデジン所属)のレネ・イギータという、ボールをドリブルして相手ゴール前まで駆け上がる、特異なゴールキーパー(GK)がいた。
  • 参照:西部謙司「現在のルールにも影響を与えた常識外れのGK.イギータは自由を満喫した」(2019年11月05日)https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/wfootball/2019/11/05/gk_split/
 相手のスルーパスをカットするスイーパー的な役割を担う……など、ディフェンスにおいて時代を先取りするところ無きしもあらずであったが、彼は基本的に際物であった。

 すると大谷翔平も際物だということになり、そこでこの話は終わってしまう。

攻・守「二刀流」のNFLプレーヤー???
 それでは。攻守がルール上またポジション上、はっきり分かれるアメリカンフットボールならば、この例えはどうなるのか? バカバカしいが、敢えてやってみる。<1>

アメリカンフットボール(QBペイトン・マニング)
ペイトン・マニング(NFLインディアナポリス・コルツ)

 20**年、日本人初のNFLプレーヤーとしてドラフトされた大谷翔平は、しかし、20世紀前半まではアメリカンフットボールでも行われていた攻・守両面でのプレーを望み、所属チームもこれを認めた。

 すなわち、攻撃時はオフェンスの要QB(クオーターバック)として、守備時はディフェンスの要LB(ラインバッカー)として、大谷翔平はプレーする。
  • 参照:スポジョバ「アメフトのポジション一覧!役割を知ろう!」https://spojoba.com/articles/958
 周囲の懐疑的な声を跳ね返して、なるほど大谷翔平の攻・守「二刀流」は「通用」した。

 しかし、シーズンを通して「二刀流」でプレーする大谷翔平の肉体的な消耗は激しい。レギュラーシーズン後半には疲労が出て、欠場が多くなる。つまり、主力選手が2人分いっぺんに離脱することになる。そのためもあってか所属チームの成績も低迷、毎シーズン、負け越し続き。スーパーボウルはおろか、プレーオフにも出場できない。

 所属チームもジャパンマネーで経済的に潤いはしたけれども、チームとして勝てないのはもどかしい。本音では攻・守どちらかのポジションに専念してほしいと思っている。また、チームとして勝てないことに地元のファンは不満を抱いている。

 ……と、まぁ、こんなところか?

チームスポーツとしての野球と「二刀流」???
 もっとも、アメリカンフットボールは激しい肉体的接触があるスポーツだから、こんなことは現実には起こり得ない。

 大谷翔平の「二刀流」が何とか成り立っているのは、そういうスポーツではない野球(ベースボール)だからなのかもしれない。それでも、実は彼の肉体的な消耗は激しい。

 2021年はシーズン終盤で疲労が出て、9月後半以降は登板を回避した。

 2022年は打者の方で疲労が出て、9月11日以降にはホームランが出なくなった。

 2023年8月には、投球中に右ひじの靭帯を損傷して投手としてプレーすることが出来なくなった。

 2024シーズンは、その治療とリハビリのために「二刀流」はお預けである。

 また、彼が所属したロサンゼルス・エンゼルスも、移籍した2018年からずっと負け越しであった。つまり、ワールドシリーズはおろか、プレーオフにも出場できていない。

 いったい、「二刀流」とは、チームが勝つため、チームがプレーオフに進出するため、そしてワールドシリーズで優勝するために、本当に必要な「戦力」なのだろうか?

大谷翔平はベーブ・ルースではなくテッド・ウィリアムズである???
 こんな大谷翔平を、しかし、いかにも凄そうに日本の野球マスコミが喧伝したのは、ひとつには「二刀流」の物珍しさから、もうひとつは、野球が、チームの成績とはあまり関係のない「個人成績」や「個人記録」が幅を利かせているスポーツだからである。

 そういえば、「最後の4割打者」と呼ばれ、打撃三冠王を2度も獲得、通算ホームラン521本など、あれだけ打撃タイトルを獲りまくった強打者テッド・ウィリアムズは、ワールドシリーズ進出はわずかに1回のみ。それも敗退に終わっている。

大打者の栄光と生活: テッド・ウィリアムズ自伝 (SUPER STAR STORY)
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ベースボール・マガジン社
1973-03-01


テッド・ウイリアムズのバッティングの科学 新装版
ジョン アンダーウッド
ベースボール・マガジン社
2000-03-01


 しかし、実際、「二刀流」で個人成績を上げてみせたところで「それ」でチームを勝たせるわけではなし、ベーブ・ルースがホームランをガンガン打ち出して野球の在り方を大きく変えたようなことが起こったわけではなし……。

 ……結局、大谷翔平の何がどう凄いのか? いまひとつ分かりにくい。

 あくまで「二刀流」は彼の自己満足に過ぎないのではないか? ……という「偏見」が個人的に抜けないのである。





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