2023年ラグビーワールドカップ、日本代表はイングランド、アルゼンチンに「善戦・健闘」したが敗戦。1次リーグで敗退して、残念ながら2大会連続してのベスト8は成らなかった。
今後、日本ラグビーに必要なことは何か?
「選手たちはこれ以上頑張れない.それぐらい頑張っていたので,仕組み作りを変える必要がある」(五郎丸歩氏,元ラグビー日本代表)
- 参照:日刊スポーツ「[ラグビー]五郎丸歩氏〈仕組み作りを変える必要がある〉~強化プランの根幹の変更を提唱」(2023年10月8日)https://www.nikkansports.com/sports/rugby/wc2023/news/202310080001762.html
では、その変えるべき「仕組み」とは何か?
「全国大学選手権という大会のことだけでなく,大学生年代の強化の枠組みをどう見直すかを議論しています」「大学生がレベルの高い試合をできていないという認識は強く持っています.来季に向けて速やかに改善したい」(岩渕健輔・日本ラグビーフットボール協会専務理事,元ラグビー日本代表)
- 参照:大友信彦「日本ラグビー界の大きな課題『大学生の試合の少なさ』~W杯再招致のためにも…協会には実効性のある改革を望みたい」(2023年11月9日)https://www.chunichi.co.jp/article/804115
こういう話を聞くと「おッ! 分裂していた日本の大学ラグビー界もいよいよ統合されるのかな?」などと早合点してしまう。
その昔、関東大学ラグビーは伝統校と新興校が「対抗戦思想」に基づいた、試合を組む/組まないというマッチメイクの問題を巡って対立し、伝統校を中心とした対抗戦グループ(慶應義塾大学,早稲田大学,明治大学など)と、新興校を中心としたリーグ戦グループ(法政大学、中央大学、日本大学など)に分裂した。
- 参照:昔のラグビー~慶應義塾大学vs帝京大学の公式戦が無かった〈対抗戦思想への拘泥②〉(2023年10月11日)https://gazinsai.blog.jp/archives/50245564.html
それを、日本ラグビーのレベルアップのために両グループを再度統合する(場合によっては京都産業大学,天理大学,関西学院大学などの関西の有力大学も含めて統合し全国リーグとする)となると、感情的な反発(特に早・慶・明の伝統校とそのファン)が大きく、岩渕健輔専務理事も現時点でハッキリ明言するわけにはいかない。
しかし、今回のワールドカップで指摘された日本代表の層の薄さ=若手の成長の遅れを解消する。すなわち大学ラグビーでのレベルの高い試合を増やすとなると、必然的にそうなるしかない。
日本にあるような「大学ラグビー」は海外の主要ラグビー国には存在しない。そうした海外のラグビー強豪国で才能ある選手は「大人」の選手に混じって二十歳そこそこで代表と国際試合にデビューし、中にはその二十歳そこそこでキャプテンまで任される選手がいる。
だから、日本の「大学ラグビー」は、例えば、ジョン・カーワン(ニュージーランド)やエディー・ジョーンズ(オーストラリア)といった外国出身の歴代のラグビー日本代表ヘッドコーチなどから、厳しい批判にさらされてきた。
そもそも大学ラグビーいらない論。または関東大学ラグビーの対抗戦グループとリーグ戦グループを統合しろという意見。
そして、毎年11月23日(祝日)に行われる早慶戦(早稲田大学vs慶應義塾大学)、毎年12月第1日曜日に行われる早明戦(早稲田大学vs明治大学)の日程を前倒し、11月中にレギュラーシーズンを終わらせれば、日本ラグビーの強化にもっと時間を割けるのに……といった意見などなど。
しかし、日本のラグビー環境は海外のラグビー国と違った固有の事情がある。多くの選手は高校に入ってからラグビーを始める。小学生のラグビースクールで多少の経験があっても、中学校にラグビー部がない学校がほとんどだから、選手の経験値に断絶ができる。
したがって、日本の場合、少年少女のラグビーと大人のラグビーと間の中間的なカテゴリー、すなわち「大学ラグビー」には存在意義があるのだという意見が一方である。これが、今回、岩渕健輔専務理事のコメントを紹介したラグビージャーナリスト・大友信彦氏の見解である(昔の本に書いてあった.今でもそう考えているかもしれない)。
その一方で大友信彦氏は、日本ラグビーのためにも関東大学ラグビーの対抗戦グループとリーグ戦グループは統合するべき……という意見の持ち主であった。
一方、「対抗戦思想」の原理主義者であり、癖のあるラグビー評論家(反サッカー主義者としての悪名も高い)中尾亘孝は絶対反対するだろうし、生島淳氏も「日本ラグビーの裾野が狭くなる」という理由(統合してしまうと,ごく少数の大学しかラグビー強化に力を入れなくなるという意味)で両グループの統合には反対の立場であった。
だが、日本ラグビーの人気が早・慶・明・同(同志社大学)の大学ラグビー中心から、日本代表の国際試合に完全に移っていることを鑑みれば、この「流れ」は変えられないのかもしれない。
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