以前、大谷翔平が在籍していたロサンゼルス・エンゼルス(Los Angeles Angels)。
ロサンゼルスにあるから(厳密にはLA近郊のアナハイムだが)、ロサンゼルス・エンゼルス。これはすぐに納得できる。
それでは、大谷翔平が今季からプレーする、同じLAのロサンゼルス・ドジャース(Los Angeles Dodgers)とは?
インターネットが無かった昔、紙の英和辞典で「dodge」を引くと「(…を)さっと避ける,(…に)ひらりと身をかわす,巧みに回避する,ごまかす」という動詞が出てきて意味がよく分からなかった。
- 参照:Weblio「dodgeとは 意味・読み方・使い方」https://ejje.weblio.jp/content/dodge
しかし、今では「Dodgers」の名前の由来も広く知られるようになった。
- 参照:What an Interesting World「ロサンゼルス・ドジャースはなぜドジャースというのか? その意味,由来についての詳細」(2018.1.19)https://tmbi-joho.com/2018/01/19/dodgers-origin/
- 参照:雨宿り「[LAD]ロサンゼルス・ドジャースの歴史」(2023年12月24日)https://sports.yahoo.co.jp/official/detail/2023122100080-spnaviow
この「ロサンゼルス・ドジャースの名前の由来」のひとくち話に、スポーツライターのあの玉木正之氏も参戦している。
ロサンゼルス・ドジャースという球団の、「Dodgers」の意味は? という質問で、ヒントとして「Dodgers の dodge とは、ドッジボール(Dodgeball)のこと」と書いておいたので……〔略〕……〔略〕「ドッジボールの名称は英語の dodge(素早く身をかわす)からきている」。つまりドッジボールとは、「ボールをぶつける遊び」ではなく、「ボールを避ける遊び」なのだ。そして、ドジャース(Dodgers)と、人を表す -er が付くと、「避ける人」という意味になる。これはロサンゼルス・ドジャースが、かつてはニューヨークのブルックリン区で生まれた野球チームであることに由来している。当時のブルックリンは、家が建て込んだ、道路の狭い下町で、しかもトロリーバス(路面電車)が走っていた。そこでブルックリンの子供たちが道路で遊んでいると、親たちはいつも子供たちに向かって、トロリーバスや自動車を「Dodge! Dodge!(避けろ! 避けろ!)」と叫んでいた。そこで、ブルックリンの子供たちはいつしか、「ドジャー(Dodger)」と呼ばれるようになったのであった。そのブルックリンに野球チームが創設されたのは、メジャーリーグの前身であるアメリカン・アソシエーションという組織の野球リーグが生まれたとき。最初(1884年)は、チーム名をアトランティックスとしていたのだが、その後、スーパーバス、トロリードジャース、ロビンスといった名称に変わり、1932年から、ブルックリン・ドジャース(ブルックリンの子供たち)が正式名称となった。広々としたカリフォルニアのロサンゼルスに本拠地を移したあとも、つまり子どもたちが道路で遊ぶこともなくなり、自動車を避けなくてもよくなったあとも、ドジャース(ブルックリンの子供たち)という名称は残したのだった。……と説明が長くなってしまったが、この Dodgers という球団名の意味を知っている日本人はほとんど皆無……とまでは言わないまでも、ごく少数なのではないだろうか。オフサイドの説明のときにも書いたように、日本人はスポーツを体育として学んだ結果として、身体を鍛えることしか考えなくなっている。われわれ日本人は、スポーツに関するわからないことや言葉を、疑問にも思わず、調べようともしない癖が付いてしまっているのだ。玉木正之「野球チームの名前の由来~ロサンゼルス・ドジャースって〈避ける〉チーム?」@『スポーツって、なんだ?』#5(春陽堂書店)https://www.shunyodo.co.jp/blog/2018/12/sports_5/
この説明は、先に掲げた他の説明と大きな違いはない。ブルックリン・ドジャースを「ブルックリンの子供たち」(ブルックリンっ子)と意訳したのは、なかなか素晴らしいセンスだ。
もっとも、自動車のバスと鉄道の路面電車を混同している間の抜けたところは、玉木正之氏の「あるある」であるが(爆)。
日本プロ野球(NPB)の球団の愛称は、タイガース、ドラゴンズ、ライオンズ、スワローズなど「強い,美しい,格好いい,速い etc.」といったイメージで命名する。
一方、アメリカのプロスポーツは、英語が母語でもあるから、このブルックリン・ドジャース同様、ボルチモア・オリオールズやカンザスシティ・ロイヤルズのように、本拠地の土地柄に馴染んだ愛称を付ける。
「日本人はスポーツを体育として学んだ結果として……」云々というのは、玉木正之氏の説教臭いところだが、どうせ、ドッジボールとドジャースの共通性を持ち出すならば、サッカーで同じ語源を持つ「ドジング」(dodging)という概念があることを書いたらよかったのではないか?
サッカーで1対1のボール奪取の場面で「ひらりと身をかわす」技術のことを「ドジング」という。
- 参照:シェアトレ「[1vs1のディフェンスの基礎]ドジングの練習」https://www.sharetr-soccer.com/posts/view/1052
もっとも、玉木正之氏は知らなかったようだが(爆)
玉木正之氏は、Google検索やWikipedia日本語版で調べが付く程度の内容を、ドヤ顔で紹介しては得意がっている事が多い。それでも通用する、幸せな立場にいるスポーツライターが玉木正之氏なのである。
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