スポーツライター玉木正之氏の知的誠実さを問う

日本のサッカーカルチャーについてさまざま論じていきたいと思っています。

タグ:野球

リバプールの遠藤航は地上波で報道されない?
 テレビのスポーツニュースは、投打「二刀流」の日本人メジャーリーガー・大谷翔平、あるいはプロ野球や高校野球のゴリ押し報道をしていない。それはアンチ野球派のサッカーファンのバイアス(偏見)だ。マスコミは、サッカー英プレミアリーグの遠藤航の活躍も、バスケットボールNBAの八村塁の活躍もきちんと報じている……。

 ……と、弁明する満田哲彦氏(元電通本社オリパラ室営推部長、元JFAマーケティング担当部長、現「株式会社ミッションスポーツ」CEO)の発言の一部が、サッカーサイト「FOOTBALL TRIBE JAPAN」に「リバプール遠藤航は地上波で報道されない? 元電通関係者反論〈久保建英・大谷は…〉」と題して、2024年3月12日に載った。
 これを受けて、当ブログはSNS「X」(旧Twitter)に「思うところ」をいろいろ書いた。

 しかし、この満田哲彦氏の発言は「FOOTBALL TRIBE JAPAN」が独自に取材したものではなく、実際には満田哲彦氏自身の「X」に投稿されたポストの引用であった。このサッカーサイトは、独自に取材をぜず、「X」で見つけたネタを元に記事を書いていると言われる悪名高きメディアである。当ブログがこれで反応したのはとても良くないことであった。

 そこで、満田哲彦の実際の「X」のポストの詳細をよく読み、よく吟味して、あらためてブログで「思うところ」を述べようと思っていた(体調不良などで遅くなった)。すると、あにはからんや、当ブログは「X」上で満田哲彦氏にブロックされていたのである。

 なぜか? 満田哲彦氏の言い分では、野球をdisっているサッカーファン、サッカーをdisっている野球ファンは「スポーツの敵」であり、そのような輩とは関わりあいたくない(ブロックする)というのだ。当ブログは「スポーツの敵」と認定されてしまった(もっとも、当ブログは野球それ自体がつまらないと書いた覚えはないのだが)。

 とまれ、ブロックされたことはいたしかたない。不完全で全く的外れな指摘も書くだろうが、記憶と「FOOTBALL TRIBE JAPAN」に引用された部分に頼って、当ブログは満田哲彦氏のスポーツ報道観に関して「思うところ」を書いていくことにする。

「公共の電波」と大谷翔平報道の公益性
 とにかく、野球以外のスポーツのファンは、欧州サッカーの遠藤航や三笘薫、久保建英、バスケットボールNBAの八村塁や渡邊雄太……といった、野球以外の日本人アスリートの活躍が、地上波テレビではほとんど報道されないと憤懣している。
 一方、『株式会社ミッションスポーツ』の満田哲彦CEO(元JFAマーケティング担当部長・元電通本社オリパラ室営推部長)の見解は異なる。満田氏は「そろそろ『日本のメディアは報じない』という大きな主語からの脱却を」と切り出すと、遠藤の活躍ぶりが〔2004年3月〕11日のテレビ朝日系『報道ステーション』でも報じられたことに言及。

 同番組の平均視聴者数を700~800万人、到達人数を1500~2000万人と見積もった上で、「報道ステーションだけで、700万人ほど遠藤航選手の報道を見てる」と私見を披露。

 他の地上波メディアでも「久保、三笘、八村塁(レイカーズ)などのことは、ずっと報じ続けている」として、「日本のメディアは野球ゴリ押し、というバイアス〔偏見〕がたぶんこれからも続く。でも、本当に日本のメディアをチェックしてる?」と疑問を投げかけた。

Shota(文)/FOOTBALL TRIBE JAPAN「リバプール遠藤航は地上波で報道されない? 元電通関係者反論〈久保建英・大谷は…〉」(2024.03.12)より
 テレビは浦和レッズのACL優勝もきちんと報じていた。だから気にしなくていい……と、満田哲彦氏は「X」に書いていたと記憶しているが(曖昧)、しかし、それは「足を踏んづけている側の論理」ではないか。

 いやいや、いやいや、満田哲彦氏よ。申し訳程度に報道される遠藤航や八村塁と比べると、スポーツ報道における野球報道の量、特に大谷翔平報道の量は格段に多い。満田哲彦氏は、報じた・報じないだけで事を矮小化してはいないか。

 なるほど、テレビは遠藤航らの活躍を報道してはいる。だが、そこには俗に「大谷翔平15分、遠藤航15秒」と揶揄される野球(大谷翔平)とサッカーその他のスポーツ(遠藤航ら)との「報道格差」がある。しかも、量だけでなくその質(内容)も問題だ。遠藤航の試合は公式戦の大一番、対して大谷翔平は練習試合なのに……である。

 一説に、海外サッカーの試合のハイライト映像は、短時間でも数万円から10数万円の高額な放映権料が必要とされ、翻ってアメリカのメジャーリーグベースボール(MLB)の映像の権利は各テレビ局が保有しており、いくら放送しても問題ないのだという。
  • 参照:週刊女性PRIME「《大谷は15分、遠藤は15秒》大谷翔平の〈練習試合〉を連日特集のテレビ局にサッカーファンから不満の声、の〈歴史的〉活躍の遠藤航をスルーの背景にの〈放映権〉問題」(2024.3.14)https://www.jprime.jp/articles/-/31213
 公平を期すために、この話も紹介した。もっとも、野球以外のスポーツをスポーツニュースで取り扱う方法などいくらでもあるのだが。いずれにせよ……。

 片や、サッカーの遠藤航や三笘薫、久保建英、バスケットボールの八村塁や渡邊雄太ら、野球以外のスポーツの話題は、テレビでは通常のスポーツニュースの枠内で淡々とテレビは報じる。

 こなた、野球の話題は、特に大谷翔平の話題は、些細なことまで大々的に、過剰な時間を割いて、時として政治、経済、社会、国際情勢、自然災害などの重要で公益性がある話題を差し置いて、一般ニュースで、まるで国家的大事であるかのように、朝鮮中央テレビが北の将軍様を称揚するかのようにテレビは報じる。

 テレビ局は、国民の財産である、いわゆる「公共の電波」を格安で使っており、公共放送たるNHKはもちろん、民間放送(民放)もまた、その放送内容に一定の公益性が求められる。

 大谷翔平がホームラン王を獲った、リーグMVPを獲ったというのであれば、それはオリンピック(五輪)やワールドカップ(W杯)といった世界大会で、日本人選手や日本代表が活躍したなどと同等の話題であり、一般ニュース枠で扱ってもいいかもしれない。

 しかし、大谷翔平は今日も(練習試合で)ホームラン打ちましただとか、結婚しましただとか、飼い犬ととじゃれあっています……みたいな由無し事(よしなしごと)を、毎日毎日一般ニュース枠を使って報道するのはおかしい。

 それはテレビの公益性から逸脱している。また、テレビにおける野球報道の量はその公益性に見合っていない。

 テレビの野球報道の過剰さ、大谷翔平報道の過剰さを批判する人たちを、満田哲彦氏は「大きな主語」という表現を用いて否定する(「X」で多用している)。どうやら氏は、この「大きな主語」という言い回しが大好きで、この言葉を使えば何か高尚なことを言ったと思い込んでいるらしい。

 しかし、テレビにとっては「野球」や「大谷翔平」こそが「大きな主語」ではないのか?

テレビの「野球ゴリ押し」には裏付けがある
 Jリーグが1994年にスタートして30余年。サッカーが日本のスポーツ界の王座に就いたわけではないが、その間、日本人のスポーツへの趣味・嗜好は多様化し、以前は王座にあった野球は、その地位からは降格している。もはや野球は国民的な了解事項ではない。

 そういえば、満田哲彦氏も、日本人のスポーツ人気は、野球やサッカーや大相撲など、競技ごとにセグメント化(区分化、部分化の意味)していると「X」で書いていた記憶がある(曖昧)。大谷翔平の人気も本来はセグメント的なものだ。2023年に彼が出場したメジャーリーグの試合は、実は大して視聴率が取れていない。

 しかし、テレビのスポーツ報道はセグメント化していない。

 マスコミは、特にテレビは、日本で野球がスポーツの王様だった「昭和」の時代(~1989年)そのままの感覚で、スポーツ報道といえば野球の情報を過剰な量と内容で放送する。まずは、それ自体が「ゴリ押し」であり、非野球ファンの不評を買っている。

 だが、これすら満田哲彦氏は認めたくはないらしい。

 満田哲彦氏は「日本のメディアは野球ゴリ押し、というバイアス〔偏見〕がたぶんこれからも続く。でも、本当に日本のメディアをチェックしてる?」と言うけれども、日本のメディア(テレビ)が野球をゴリ押しするのは、バイアス(偏見)でもフィクション(虚構)でもなく、あからさまな世の中の実際の在り様である。

 これには一定の裏付けがある。株式会社エム・データが提供する「2023年TVニュースランキングを発表」では、総合ランキングの1位は「ロシア・ウクライナ情勢」の133時間28分18秒(時事問題)、2位が「大谷翔平・異次元の活躍」の121時間35分58秒(スポーツ)、3位は「侍ジャパン・3大会ぶりにWBC制覇」の119時間06分03秒(スポーツ)。
  • 参照:エム・データ「2023年TVニュースランキングを発表」(2023/12/12)https://mdata.tv/info/20231212_01/
エム・データ「総合~2023年TVニュースランキング」(2023年12月12日)
エム・データ「総合~2023年TVニュースランキング」(2023年12月12日)

エム・データ「スポーツ~2023年TVニュースランキング」(2023年12月12日)
エム・データ「スポーツ~2023年TVニュースランキング」(2023年12月12日)

 この上位3つだけが100時間代、そのうち実に2つが野球ネタなのである。大谷翔平と侍ジャパン(野球日本代表)兼ワールドベースボールクラシック(WBC)の話題だけで、「ロシア・ウクライナ情勢」の倍近くも時間を取っている! しかし、総合ランキングのトップ10を見てみると、野球以外にもっと報じるべきニュースはたくさんある。

 これなどを見ていると、テレビは、大谷翔平と侍ジャパンの活躍の話題をしつこく報道することで、日本社会における野球のプレゼンス(サッカーなど他の競技に対抗して)を維持しようとしている、要はゴリ押ししているとしか思えなくなってくる。

 それでも、満田哲彦氏はテレビのスポーツ報道は不公平ではないと言う。
 なお満田〔哲彦〕氏は、大谷〔翔平〕の情報が様々な地上波番組で扱われる理由も説明。「大谷情報は、その社会的情報まで話題となっている」と主張した上で、W杯やなでしこジャパン対北朝鮮(パリ五輪最終予選)に関しても「社会的情報レベル」と位置付けている。

Shota(文)/FOOTBALL TRIBE JAPAN「リバプール遠藤航は地上波で報道されない? 元電通関係者反論〈久保建英・大谷は…〉」(2024.03.12)より
 氏が言う「大谷翔平の社会的情報」が、テレビ(公共の電波)の公益性をはるかに逸脱したものだということは、既に述べた。また、2023年WBCの時の侍ジャパンも事前の報道は凄まじいものがあった。またWBCでの侍ジャパンの活躍は、放映権を持っているテレビ局(テレビ朝日とTBS)の垣根を超えて好意的に報道していた。

 翻って、2022年サッカーW杯カタール大会(日本代表=森保ジャパン含む)における事前の報道は、全く寂しいものがあった。この大会の放映権を持たない民放テレビ局は、森保ジャパンが強国ドイツに劇的な逆転勝ちをして、渋々(嫌々?)サッカーの話題を取り上げ始めたのであった。

 また、2024年パリ五輪アジア予選における「なでしこジャパン」(サッカー日本女子代表)の事前の報道も寂しいものがあった(しかし、パリ五輪本大会出場を決めた日本vs北朝鮮戦は、地上波のNHK総合テレビで相応の視聴率を取った)。

 報道の量・質に明らかに格差があって、野球とサッカーが同じ「社会的情報レベル」だとはとても言えない

マスコミによる「野球防衛軍」は虚構である?
 日本のマスコミ企業(一般紙や地上波テレビ、スポーツ紙)は、例えば朝日新聞が夏の甲子園(高校野球の大会)を主催していたり、読売新聞が読売ジャイアンツ(プロ野球球団)を経営していたり……等々、野球の興行に自ら関わっている。

 また、相互に監視、批評しあう関係にあるべきマスコミ企業は、いわゆる(海外では禁じられている)クロスオーナーシップというもので、「一般紙/地上波テレビ/スポーツ紙」が資本的に系列化されている(例えば「読売新聞/日本テレビ/スポーツ報知」といった具合に)。

 加えて、アメリカ合衆国(米国)のメジャーリーグベースボール(MLB)に莫大な放映権料を支払い、これをBSや地上波で放送し、毎年、春・夏の甲子園=高校野球の大会を地上波で全試合放送している公共放送のNHKがある。

 つまり、日本のマスコミ企業は総体として野球とは利害関係者の間柄で、一蓮托生、癒着している。野球は、日本のマスコミ企業総体にとって「自社コンテンツ」なのである。

 そんな日本のマスコミにとって、あくまで日本のナンバーワンスポーツは「野球」でなければならない。新しく台頭したサッカーやバスケットボールであってはならない。野球人気は低落しているが、日本人の「野球離れ」は絶対に食い止めなければならない。

 だから、マスコミは野球をゴリ押しし、サッカーその他のスポーツを冷遇する。それは構造的な問題だ……といった説(噂)がある。

 しかし、満田哲彦氏はこの説(噂)をも「X」で否定していたと記憶している(曖昧)。氏は、いわゆる「野球防衛軍」の存在を否定しているのである。
  • 参照:プロ野球視聴率関連@wiki 視スレ辞典 や行「野球防衛軍」【やきゅうぼうえいぐん】https://w.atwiki.jp/maruko1192/pages/13.html
 2023年WBCでは読売新聞が日本ラウンドの興行権を持っていながら、実際に放送したのはクロスオーナーシップ的な関係の薄い、テレビ朝日やTBSだったということ。また、東京ヤクルト・スワローズと関係の深いフジテレビは、特に同所属のスター選手・村上宗隆ばかりを好意的に取り上げているわけではないことなどを、その理由としていたと記憶している(曖昧)。

 しかし、そもそも、玉木正之(スポーツライター)が常々批判してきたように、マスコミ企業がスポーツの大会を主催したり、スポーツチームを種有したりすること自体が問題なのである。

 玉木正之の場合は、それが「スポーツジャーナリズムの批判精神の欠落する」ことが主な理由であったが、その中には、マスコミ(テレビ)自身の利害関係のために、野球の話題を人気の実態以上に過剰に放送すること(ゴリ押し)も入っているのだと、思い当たった。

 実際に日本のマスコミ企業が高校野球の大会を主催していたり、プロ野球球団を所有していたりする以上、マスコミ(テレビ)はサッカーその他の競技を蔑ろにして野球(特に大谷翔平)をゴリ押ししているという風説は、単なる陰謀論や被害妄想では終わらない。

 マスコミ(テレビ)の「野球防衛」(野球ゴリ押し)とは、特定のテレビ局が自局(自社)の利益に直結させるために、特定の球団や選手や大会を積極的に取り上げる……という性格のものではない。むしろ、それは業界総体のコンセンサス(総意)である。

 日本の高度成長、経済大国華やかなりしその昔、論壇では「日本株式会社論」という論説が持てはやされていた。日本の国民経済をひとつの会社と見なす論説である。そこでは、例えばこんなことが語られていた。

 家庭電機メーカーでいえば、日本には松下(パナソニック)・日立・東芝・ソニーなどが存在する。だが、仮に外国の同業者と競争しなければならなくなると、ひとつの会社のように結束し(日本株式会社)、業界総体のコンセンサスが形成される。そこでは特定のメーカーが突出することはない。

 日本のテレビ局でも、例えば、1993年の「ドーハの悲劇」の時のサッカーW杯アジア最終予選。サッカー日本代表=オフト・ジャパンは5試合を闘ったが、その地上波の中継局は、日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京が、きれいにそれぞれ1試合ずつ担当した(衛星波はNHKが担当)。

 これは一種の談合ではないか? ……と、田中康夫(作家、元長野県知事)は批判していたが、この横並びこそ、日本特有の業界総体のコンセンサスである。業界総体で利益を分け合い、ひとつのテレビ局が突出することはない。

 また「公共の電波」を免許によって使用しているテレビ局、少なくとも東京のキー局に関しては「潰れる」心配もほとんどないこともある。だから過激な競争は必要ない。

 マスコミ(テレビ)の野球ゴリ押しもこれと似たようなものだ。それは業界総体のコンセンサス(総意)である。

 2023年、WBCでの侍ジャパンの活躍は、放映権を持っているテレビ局(テレビ朝日とTBS)の垣根を超えて、テレビは好意的に報道していた。それは、前掲の株式会社エム・データ提供「2023年TVニュースランキングを発表」でも、まず間違いない。

 翻って、2022年サッカーW杯カタール大会(日本代表=森保ジャパン含む)における事前報道は、全く寂しいものがあった。この大会の放映権を持たない民放テレビ局は、森保ジャパンが強国ドイツに劇的な逆転勝ちをして、渋々(嫌々?)サッカーの話題を取り上げ始めた。

クリロナに「大谷翔平を知っていますか?」と愚問する
 日本のテレビは野球を「ゴリ押し」している……という見方はサッカーファンのバイアス(偏見)であると言う満田哲彦氏。しかし、その割にはテレビのスポーツ報道には、野球を人気随一のスポーツに見せたいかのような、不自然な現象が多い。

 【その1:WBC=侍ジャパンの不自然な視聴率分割】野球日本代表=侍ジャパンのテレビ中継の番組時間帯は、低視聴率を回避するために、または高視聴率を叩き出すために不自然なタイミングで分割される。

 例えば、2023年3月6日の強化試合「阪神タイガースvs侍ジャパン」の中継では、午後6時11分からの74分間は世帯視聴率15.5%、個人視聴率は9.4%。それ以降の125分間が世帯視聴率20.2%で、個人視聴率は12.9%。このように侍ジャパンの中継視聴率は分割されており、近年はこの分割された一部の時間帯の高視聴率が大々的に報じられている。
  • 参照:ケン高田/アサ芸プラス「WBC強化試合〈20.2%高視聴率〉をサッカー派が揶揄する〈分割ジャパン〉って?」https://www.asagei.com/249763
 サッカー日本代表は、たとえW杯本大会でもこのようなことはない。

 番組時間帯の分割までして侍ジャパンの、すなわち野球の視聴率を高く見せることは、視聴率調査という統計への信頼を損なう行為である。テレビ局は、そうまでして野球の視聴率(≒人気)の方がサッカーの視聴率(≒人気)より高いことを誇示したいのだろうか?

 視聴率調査をする会社「ビデオリサーチ」は「第三者機関の調査会社として設立されました」と、自身の公式サイトで謳っているにもかかわらず……でありながら、このような作為的なことを、(野球と癒着した?)テレビはやるのである。
  • 参照:ビデオリサーチ「沿革」https://www.videor.co.jp/company/history.html
 これでは日本のテレビは野球をゴリ押ししていないという意見は苦しい。

 【その2:クリロナに「大谷翔平はご存じですか?」と愚問をする】2023年7月に来日したサッカーのスーパースター クリスティアーノ・ロナウド(クリロナ、ポルトガル)に、日本テレビは「大谷翔平をご存じですか?」などと愚かな質問をして炎上した。
  • 参照:川瀬大輔/アサ芸プラス「クリスチアーノ・ロナウドに〈大谷翔平を知っているか〉バカ質問の日本テレビには〈明石家さんまの前科〉があった」(2023年7月31日)https://www.asagei.com/excerpt/273423
クリロナに「大谷翔平はご存じですか?」と質問する馬鹿インタビュー(1)
クリロナに「大谷翔平をご存じですか?」と愚かな質問をした日テレ(1)

 当然、クリロナはこの質問に「No!」と答えた。

クリロナに「大谷翔平はご存じですか?」と質問する馬鹿インタビュー(2)
クリロナに「大谷翔平をご存じですか?」と愚かな質問をした日テレ(2)

 クリロナに「大谷翔平はスゴイ!」と言わせたい。そして「大谷翔平は世界的なスーパースターだ!」と喧伝したいだけの愚かな質問である。こんなことをやっているから、日本のテレビは野球を(大谷翔平を)ゴリ押ししていると言われるのである。

 クリロナに何か質問するのであれば、むしろ、サッカー日本代表で欧州サッカーで活躍するの三笘薫や久保建英らについての感想だろう。せっかく時間を割いてくれたクリロナには、全く無駄なことを質問をした。申し訳ない気持ちになる。

 【その3:大谷翔平の記者会見7000万人視聴とデマ】日本のテレビは、大谷翔平がロサンゼルス・ドジャースに移籍が決まった時の記者会見を「全米で7000万人が同時視聴」「全世界では1億人以上が同時視聴」、バイデン米大統領の一般教書演説の視聴者数2730万人を上回った……などという喧伝を行った。

 もちろん、これはデマである。

大谷翔平デマ_記者会見視聴者7000万人(1)
大谷翔平デマ、記者会見視聴者7000万人(1)

 野球というスポーツのアメリカにおけるプレゼンス、世界のおけるプレゼンスを考えたら、そんな数字は在り得ない。

大谷翔平デマ_記者会見視聴者7000万人(2)
大谷翔平デマ、記者会見視聴者7000万人(2)

 実際は4万8000人程度だったらしい。日本のテレビはこのデマを撤回していない。

 こういう例は、まだまだあるが割愛する。繰り返しになるが、こんなことをやっているから、日本のテレビは野球を(大谷翔平を)ゴリ押ししていると噂されるのだ。

両方に「いい顔」をしなければならない満田哲彦氏
 日本のテレビは「野球ゴリ押し」という説(噂)。これはバイアス(偏見)ではない。

 まあ、「株式会社ミッションスポーツ」CEOという立場上、満田哲彦氏はサッカー界にも野球界にも「いい顔」をしなければならない。だから火消し(?)に走った。

 しかし、この満田哲彦氏の「火消し」は、テレビを中心に情報を収集している人たちには通用しそうだが、インターネットやSNSを中心に情報収集している人たち……の就中(なかんずく)サッカーファンをかえって疑心暗鬼にしてしまう。





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 以前、大谷翔平が在籍していたロサンゼルス・エンゼルス(Los Angeles Angels)。

 ロサンゼルスにあるから(厳密にはLA近郊のアナハイムだが)、ロサンゼルス・エンゼルス。これはすぐに納得できる。

 それでは、大谷翔平が今季からプレーする、同じLAのロサンゼルス・ドジャース(Los Angeles Dodgers)とは?

 インターネットが無かった昔、紙の英和辞典で「dodge」を引くと「(…を)さっと避ける,(…に)ひらりと身をかわす,巧みに回避する,ごまかす」という動詞が出てきて意味がよく分からなかった。
  • 参照:Weblio「dodgeとは 意味・読み方・使い方」https://ejje.weblio.jp/content/dodge
 しかし、今では「Dodgers」の名前の由来も広く知られるようになった。
  • 参照:What an Interesting World「ロサンゼルス・ドジャースはなぜドジャースというのか? その意味,由来についての詳細」(2018.1.19)https://tmbi-joho.com/2018/01/19/dodgers-origin/
  • 参照:雨宿り「[LAD]ロサンゼルス・ドジャースの歴史」(2023年12月24日)https://sports.yahoo.co.jp/official/detail/2023122100080-spnaviow
 この「ロサンゼルス・ドジャースの名前の由来」のひとくち話に、スポーツライターのあの玉木正之氏も参戦している。
 ロサンゼルス・ドジャースという球団の、「Dodgers」の意味は? という質問で、ヒントとして「Dodgers の dodge とは、ドッジボール(Dodgeball)のこと」と書いておいたので……〔略〕

 ……〔略〕「ドッジボールの名称は英語の dodge(素早く身をかわす)からきている」。つまりドッジボールとは、「ボールをぶつける遊び」ではなく、「ボールを避ける遊び」なのだ。そして、ドジャース(Dodgers)と、人を表す -er が付くと、「避ける人」という意味になる。

 これはロサンゼルス・ドジャースが、かつてはニューヨークのブルックリン区で生まれた野球チームであることに由来している。当時のブルックリンは、家が建て込んだ、道路の狭い下町で、しかもトロリーバス(路面電車)が走っていた。

 そこでブルックリンの子供たちが道路で遊んでいると、親たちはいつも子供たちに向かって、トロリーバスや自動車を「Dodge! Dodge!(避けろ! 避けろ!)」と叫んでいた。そこで、ブルックリンの子供たちはいつしか、「ドジャー(Dodger)」と呼ばれるようになったのであった。

 そのブルックリンに野球チームが創設されたのは、メジャーリーグの前身であるアメリカン・アソシエーションという組織の野球リーグが生まれたとき。最初(1884年)は、チーム名をアトランティックスとしていたのだが、その後、スーパーバス、トロリードジャース、ロビンスといった名称に変わり、1932年から、ブルックリン・ドジャース(ブルックリンの子供たち)が正式名称となった。

 広々としたカリフォルニアのロサンゼルスに本拠地を移したあとも、つまり子どもたちが道路で遊ぶこともなくなり、自動車を避けなくてもよくなったあとも、ドジャース(ブルックリンの子供たち)という名称は残したのだった。

 ……と説明が長くなってしまったが、この Dodgers という球団名の意味を知っている日本人はほとんど皆無……とまでは言わないまでも、ごく少数なのではないだろうか。

 オフサイドの説明のときにも書いたように、日本人はスポーツを体育として学んだ結果として、身体を鍛えることしか考えなくなっている。われわれ日本人は、スポーツに関するわからないことや言葉を、疑問にも思わず、調べようともしない癖が付いてしまっているのだ。

玉木正之「野球チームの名前の由来~ロサンゼルス・ドジャースって〈避ける〉チーム?」@『スポーツって、なんだ?』#5(春陽堂書店)https://www.shunyodo.co.jp/blog/2018/12/sports_5/
 この説明は、先に掲げた他の説明と大きな違いはない。ブルックリン・ドジャースを「ブルックリンの子供たち」(ブルックリンっ子)と意訳したのは、なかなか素晴らしいセンスだ。

 もっとも、自動車のバスと鉄道の路面電車を混同している間の抜けたところは、玉木正之氏の「あるある」であるが(爆)。

 日本プロ野球(NPB)の球団の愛称は、タイガース、ドラゴンズ、ライオンズ、スワローズなど「強い,美しい,格好いい,速い etc.」といったイメージで命名する。

 一方、アメリカのプロスポーツは、英語が母語でもあるから、このブルックリン・ドジャース同様、ボルチモア・オリオールズやカンザスシティ・ロイヤルズのように、本拠地の土地柄に馴染んだ愛称を付ける。

 「日本人はスポーツを体育として学んだ結果として……」云々というのは、玉木正之氏の説教臭いところだが、どうせ、ドッジボールとドジャースの共通性を持ち出すならば、サッカーで同じ語源を持つ「ドジング」(dodging)という概念があることを書いたらよかったのではないか?

 サッカーで1対1のボール奪取の場面で「ひらりと身をかわす」技術のことを「ドジング」という。
  • 参照:シェアトレ「[1vs1のディフェンスの基礎]ドジングの練習」https://www.sharetr-soccer.com/posts/view/1052
 もっとも、玉木正之氏は知らなかったようだが(爆)

 玉木正之氏は、Google検索やWikipedia日本語版で調べが付く程度の内容を、ドヤ顔で紹介しては得意がっている事が多い。それでも通用する、幸せな立場にいるスポーツライターが玉木正之氏なのである。

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メッシ+ノイアー=大谷翔平???
 投・打「二刀流」の日本人メジャーリーガー・大谷翔平をサッカーに例えたら? FWリオネル・メッシと、GKマヌエル・ノイアーという両ポジションのスーパースターを兼ねるようなもの?
  • 参照:THE DIGEST「大谷翔平の〈価値〉に欧州メディアが脱帽! 稀有な才能を独特表現で絶賛〈メッシとノイアーが1人の人間に〉」(2023.03.31)https://thedigestweb.com/baseball/detail/id=66690
 ……などという問いはほとんど意味がない。サッカーにおいて、このふたつが両立することは無いからだ。

 その昔、コロンビア代表(ナシオナルメデジン所属)のレネ・イギータという、ボールをドリブルして相手ゴール前まで駆け上がる、特異なゴールキーパー(GK)がいた。
  • 参照:西部謙司「現在のルールにも影響を与えた常識外れのGK.イギータは自由を満喫した」(2019年11月05日)https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/wfootball/2019/11/05/gk_split/
 相手のスルーパスをカットするスイーパー的な役割を担う……など、ディフェンスにおいて時代を先取りするところ無きしもあらずであったが、彼は基本的に際物であった。

 すると大谷翔平も際物だということになり、そこでこの話は終わってしまう。

攻・守「二刀流」のNFLプレーヤー???
 それでは。攻守がルール上またポジション上、はっきり分かれるアメリカンフットボールならば、この例えはどうなるのか? バカバカしいが、敢えてやってみる。<1>

アメリカンフットボール(QBペイトン・マニング)
ペイトン・マニング(NFLインディアナポリス・コルツ)

 20**年、日本人初のNFLプレーヤーとしてドラフトされた大谷翔平は、しかし、20世紀前半まではアメリカンフットボールでも行われていた攻・守両面でのプレーを望み、所属チームもこれを認めた。

 すなわち、攻撃時はオフェンスの要QB(クオーターバック)として、守備時はディフェンスの要LB(ラインバッカー)として、大谷翔平はプレーする。
  • 参照:スポジョバ「アメフトのポジション一覧!役割を知ろう!」https://spojoba.com/articles/958
 周囲の懐疑的な声を跳ね返して、なるほど大谷翔平の攻・守「二刀流」は「通用」した。

 しかし、シーズンを通して「二刀流」でプレーする大谷翔平の肉体的な消耗は激しい。レギュラーシーズン後半には疲労が出て、欠場が多くなる。つまり、主力選手が2人分いっぺんに離脱することになる。そのためもあってか所属チームの成績も低迷、毎シーズン、負け越し続き。スーパーボウルはおろか、プレーオフにも出場できない。

 所属チームもジャパンマネーで経済的に潤いはしたけれども、チームとして勝てないのはもどかしい。本音では攻・守どちらかのポジションに専念してほしいと思っている。また、チームとして勝てないことに地元のファンは不満を抱いている。

 ……と、まぁ、こんなところか?

チームスポーツとしての野球と「二刀流」???
 もっとも、アメリカンフットボールは激しい肉体的接触があるスポーツだから、こんなことは現実には起こり得ない。

 大谷翔平の「二刀流」が何とか成り立っているのは、そういうスポーツではない野球(ベースボール)だからなのかもしれない。それでも、実は彼の肉体的な消耗は激しい。

 2021年はシーズン終盤で疲労が出て、9月後半以降は登板を回避した。

 2022年は打者の方で疲労が出て、9月11日以降にはホームランが出なくなった。

 2023年8月には、投球中に右ひじの靭帯を損傷して投手としてプレーすることが出来なくなった。

 2024シーズンは、その治療とリハビリのために「二刀流」はお預けである。

 また、彼が所属したロサンゼルス・エンゼルスも、移籍した2018年からずっと負け越しであった。つまり、ワールドシリーズはおろか、プレーオフにも出場できていない。

 いったい、「二刀流」とは、チームが勝つため、チームがプレーオフに進出するため、そしてワールドシリーズで優勝するために、本当に必要な「戦力」なのだろうか?

大谷翔平はベーブ・ルースではなくテッド・ウィリアムズである???
 こんな大谷翔平を、しかし、いかにも凄そうに日本の野球マスコミが喧伝したのは、ひとつには「二刀流」の物珍しさから、もうひとつは、野球が、チームの成績とはあまり関係のない「個人成績」や「個人記録」が幅を利かせているスポーツだからである。

 そういえば、「最後の4割打者」と呼ばれ、打撃三冠王を2度も獲得、通算ホームラン521本など、あれだけ打撃タイトルを獲りまくった強打者テッド・ウィリアムズは、ワールドシリーズ進出はわずかに1回のみ。それも敗退に終わっている。

大打者の栄光と生活: テッド・ウィリアムズ自伝 (SUPER STAR STORY)
テッド ウィリアムズ
ベースボール・マガジン社
1973-03-01


テッド・ウイリアムズのバッティングの科学 新装版
ジョン アンダーウッド
ベースボール・マガジン社
2000-03-01


 しかし、実際、「二刀流」で個人成績を上げてみせたところで「それ」でチームを勝たせるわけではなし、ベーブ・ルースがホームランをガンガン打ち出して野球の在り方を大きく変えたようなことが起こったわけではなし……。

 ……結局、大谷翔平の何がどう凄いのか? いまひとつ分かりにくい。

 あくまで「二刀流」は彼の自己満足に過ぎないのではないか? ……という「偏見」が個人的に抜けないのである。





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[有名人は文中敬称略]

日本人のプライバシー意識と大谷翔平
 投打「二刀流」の日本人メジャーリーガー・大谷翔平が自身の結婚を発表した時、その結婚相手に関する情報をほとんど明らかにしなかった。

 この対応について「大谷翔平の結婚発表で明らかになったのは、私生活に関する秘密主義だった」といった見出しで論評(批判?)したのが、アメリカの老舗スポーツ雑誌『スポーツ・イラストレイテッド』電子版である。

 一方、「大谷翔平の結婚発表は奇妙だが、日本の文化からすればそうではない」といった見出しで理解(擁護?)を示したのが、ロサンゼルス・ドジャースの地元紙「ロサンゼルス・タイムズ」電子版だった。

 「ロサンゼルス・タイムズ」電子版の記事では「記者会見を開きながら相手の名前の公表を拒否するのは、アメリカ人にとっては奇妙に映るかもしれない。だが、日本の文化の基準からすれば、これは何も異常なことではない」と指摘した。

 以上は「産経新聞」電子版の記事である。この話は意外だった。なぜなら……。
  • 参照:浅野英介/産経新聞「〈秘密主義〉〈日本の文化〉~大谷翔平の電撃結婚発表、米メディアで分かれる評価」(2024/3/5)https://www.sankei.com/article/20240305-SDF56K2BHRCLPLPI52NXD7JSP4/
 ……なぜなら、従来の通俗的な日本人論・日本文化論の世界観では、日本人は欧米人と比べて「個人主義」が未熟で、つまり日本は「個」や「私」が尊重されない文化で、だから日本人の「プライバシー」意識も希薄だとされてきたからである。<1>

日本人論の方程式 (ちくま学芸文庫 ス 1-1)
ロス マオア
筑摩書房
1995-01-01


 三島由紀夫の小説作品に端を発した、1961年(昭和36)の「『宴のあと』事件」もまた、日本人のプライバシー意識の弱さの現われだなどと言われてきた。

宴のあと (新潮文庫)
三島 由紀夫
新潮社
2020-10-28


 昔は、プロスポーツ選手のプライバシーでもアメリカの方が厳格であった……はず。

 1990年代初め、地上波の日本テレビで放送されていたスーパーボウルの中継で、NFLのスーパースター ジョー・モンタナ(当時、サンフランシスコ・49ners)に子供が生まれたという話題になった。しかし、実況担当のアナウンサー・増田隆生が「アメリカでは、あまりそういう話はしないことになっているんですよ」と語っていた記憶がある。

 そんなものなんだろうと思っていたら、最近のサッカーやラグビーのワールドカップなどでは、試合後に自分の子供にレプリカユニを着せてピッチに入れている選手が目立つ。あれはプライバシーの観点から考えて大丈夫なのだろうか?

不適切にもほどがある(!)有名人のプライバシーの話題
 とにかく、最近の日本の有名人(芸能人やアスリートなど)は自身のプライバシーを公開したがらなくなった。

 芸能界でいうと、吹石一恵と結婚した福山雅治は、自身の結婚について徹底的に隠そうとしていた。

 スポーツ界でも、元横綱・稀勢の里で大相撲・二所ノ関部屋の師匠となった年寄・二所ノ関は、結婚した自身の妻に関する情報をひたすら隠そうとしている。
  • 参照:NEWSポストセブン「元横綱・稀勢の里 常識離れな〈部屋開き〉も、まだ続く〈おかみさん隠し〉」(2022.06.15)https://www.news-postseven.com/archives/20220615_1763209.html?DETAIL
 最近は、結婚しても相手のことは「一般男性」「一般女性」とぼかすし、子供が生まれても性別すら発表しない例もある。

 しかし、「昭和」(~1989年)の昔はといえば、テレビのワイドショーの芸能記事といえば、交際が発覚したといっては(囲みで)記者会見、婚約発表で記者会見、結婚披露宴で記者会見、子供が生まれたといっては(囲みで)記者会見、子供の入学式でも(囲みで)記者会見……こんな感じであった。

 特に三浦友和と山口百恵の夫婦は、まったくそのようなカップルであった。

蒼い時 (集英社文庫)
山口 百恵
集英社
1981-04-20


 2004年(平成16)、広末涼子が最初の結婚をして長男を生んだ時は名前も公開していたから(匕□シ君、既に成人している)、その時まではそうだったのかもしれない。梨元勝(2010年没)のような「芸能リポーター」が退場したあたりから、だんだん変わっていった。

 最近では、DAIGOと北川景子、山里亮太と蒼井優が結婚に際して記者会見をしたが、これなどは珍しい例である(前者は一種の閨閥婚でもあるからか?)

 1980年代は、有名芸能人の結婚披露宴をテレビのゴールデンタイムで放送するということまでやっていた。ちなみに最も視聴率を獲得したのは渡辺徹と榊原郁恵の夫婦で(たしか40%くらい)、これはふたりの好感度が高かったからでもある。

 そんな風潮を反映してか、文藝春秋の総合スポーツ誌「スポーツグラフィック ナンバー」が1987年(昭和62)10月に「結婚大百科」という、アスリートの結婚の特集を刊行している。記憶が確かならば、原辰徳(読売ジャイアンツ)の結婚に絡めての特集だった。
  • 参照:Sports Graphic Number 181号「結婚大百科」(1987年10月5日発売)https://number.bunshun.jp/articles/-/816
 長嶋茂雄・長嶋亜希子、ジャイアント馬場・馬場元子……といった有名な夫婦が登場。プロ野球の妻には年上、スチュワーデス(キャビンアテンダント)、多摩川ギャル(死語)が多いといった話題(何と現ラグビーライターの大友信彦が書いている!)。相撲部屋の女将の苦労話など。たしかサッカーの釜本邦茂は再婚だと、この雑誌で知った。

 それにしても、時代が時代とはいえ、よくこれだけアスリートの結婚や恋愛、夫婦の話題を集めだものだと感心する。「平成」(1989年~2019年)を挟んで「令和」(20199年~)の現在では考えられない、ありえない。

 事の良し悪しではなく、過去においてはこうしたことが行われていた。

メジャーリーガー「奥様会」の存在
 もっとも、元・稀勢の里の妻は相撲部屋の女将だから、しかるべき角界の「社交」の場があるはずであり、全く表に出ないわけにはいかないはずである。

 それはアメリカのメジャーリーガーの妻も同様である。オールスターゲーム前日恒例のレッドカーペットは夫人や恋人の同伴が慣例化しているなど、公の場に姿を見せる機会が少なくないからだ。

 特にメジャーリーガーの妻の場合、ワイブスクラブとかワイブスミーティングとか言われる「奥様会」なる活動の存在がある。
 MLBでは慈善事業を積極的に行っており、選手だけでなく、夫人の参加は半ば義務のようなもの。監督やコーチ、中継局ディレクターの夫人までが出席するイベントも珍しくないという。〔略〕

 「MLBのチャリティー活動の一環として夫人達による『ワイブズ・クラブ』が組織されているほどです。各球団の本拠地を中心に活動しており、ホームレスや恵まれない子供を支援したり、女性のさらなる地位向上を訴えるなど、あらゆるイベントを行っています。日本人選手も例外ではなく、かつてはイチローや松坂〔大輔〕らの夫人の多くがボランティア活動への協力を惜しまなかった」〔スポーツライター・友成那智〕

 中でもドジャースはボランティアやチャリティー活動に熱心な球団のひとつとして知られる。ド軍の選手夫人は、まるでモデルか女優のような美貌の持ち主が少なくないだけに、チャリティーイベントの一環として、ドレスアップした美人妻達によるファッションショーを行ったこともある。2019年には当時、ド軍に所属した前田〔健太〕(現タイガース)が、着物姿の早穂夫人とともに登場して注目を集めた。

 「高給取りや主力選手の夫人がイベントを主催するケースも多く、ド軍ではこれまで長らくエースを務めたカーショウのエレン夫人が奥様達をまとめてきた。大谷〔翔平〕はプロスポーツ史上最高の1014億円の大型契約を手にしただけに、夫人には積極的な参加が求められるでしょう。いずれはカーショウ夫人のように主催者も任されるのではないか」〔同〕

日刊ゲンダイDIGITAL「大谷翔平が新妻を隠し切れないメジャー奥様会のしきたり…〈ファッションショー〉に慈善活動、レッドカーペット」(2024/03/02)https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/336954
 しかし、ジェンダーフリーやら何やら、ポリコレがキツイ社会になったアメリカで「奥様会」のような活動が今なお盛んに行われていることは、なかなか興味深い。

 あるいは、これもノブレス・オブリージュ(noblesse oblige)なのだろうか?

 そうであるならば、大谷翔平の妻(旧姓・■中真美子さん?)も、メジャーリーグ「奥様会」参加の義務から逃れられない……はずである。

 日本人はチャリティーやボランティアを軽視している、その精神が欠落している……などという変な評判だけは立ってほしくない。





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[文中敬称略]

大谷翔平への本音
 投打「二刀流」の日本人メジャーリーガー・大谷翔平が、2024年2月29日、日本人女性と結婚していたことを発表した。

 普段から大谷翔平(と野球)を依怙贔屓してきた日本のマスコミはこの一報に過剰反応、テレビは一日中この話題を流していたらしい。これには一般視聴者の中にも「ウンザリ」している人が少なからずいたという。

 YouTubeでテレビ番組やテレビ界について鋭い論評をしている、元放送作家・長谷川良品(別名:長谷川大雲)の【テレビ悲報ch】では、この件をいろいろ考察している。

ワイドショーのせいで大谷翔平選手が嫌われる理由【大谷ハラスメント】
  • テレビによる大谷選手の無自覚な商品化で消費を早め嫌悪さえ生むことへの懸念。
  • 当日の午後4時42分、国会内で開かれた衆議院政治倫理審査会(政倫審)の生中継〔NHK〕の最中のテロップで「大リーグ・大谷翔平選手 結婚を発表」「相手は日本人女性 インスタグラムで」。午後9時からの『ニュースウォッチ9』〔NHK〕では政倫審を抑え、トップニュースで報道。
  • せめてNHKくらいは矜持のようなものを保ってほしいところ。
  • 「#大谷ハラスメント」。
  • 大谷選手自体は好きなんだけど……。
  • いやこれ繰り返しますが大谷選手が悪いわけではありませんからね。
  • 大谷選手自身を見世物小屋の珍獣扱いすることに。ひいては、消費を早め、場合によっては嫌悪を生むことにもなりかねない。
  • そして、こうした大谷選手の発言こそ、マスコミの玩具に、商品化されていることへの抵抗とも感じる。
参照:東スポWEB「〈♯大谷ハラスメント〉とは? 元放送作家〔長谷川良品〕が警鐘〈嫌悪を生むことにもなりかねない〉」(2024年3月3日)https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/294115
 いや、もう既に大谷翔平は嫌悪されているよ。サッカーファンなど野球以外のスポーツのファンから、野球にそんなに関心のない一般視聴者から、諸々の層に……。

 みんな「炎上」したり、「垢バン」されたりするのが怖いから、SNSなどでは「大谷翔平のことはすごいと思うけど……」とか「大谷のことは好きだけど……」とか、枕詞(エクスキューズ)を付ける。また露骨な表現をとることは避ける。

 けれども、実際には彼への過剰な礼賛報道に嫌気がさしている人は多い。

 大谷翔平は、公共の電波を使った貴重なスポーツ報道リソースを食い潰す存在だからである。

 日本のマスコミのスポーツ報道が大谷翔平に著しく偏向しているために、欧州サッカーの遠藤航や三笘薫、あるいは久保建英、バスケットボールNBAの八村塁や渡邊雄太……といった、他の日本人アスリートの活躍がほとんど報道されない。

 また、日本のマスコミのスポーツ報道が大谷翔平に著しく偏向しているために、Jリーグ(サッカー)やBリーグ(バスケットボール)などといった、野球以外のスポーツがほとんど報道されない。

 サッカーなど野球以外のスポーツのファンの少なくない層は、本音では大谷翔平のことを快く思ってはいない。

大谷翔平報道は構造的な問題
 なぜ、日本のマスコミは大谷翔平のことを過剰に報道するのか? 長谷川良品はこれを「日本のマスコミの劣化」「日本におけるテレビというメディアの劣化」として捉えているようだが、違う。もっと別の根の深い、構造的な問題だ。

 日本において野球は歴史ある人気スポーツだが、昨今は人気の低下が著しい。地上波テレビのプロ野球中継は視聴率が下がり続け、ついにはほとんど放送されなくなった。たまに読売ジャイアンツ(巨人軍)と関係の深い日本テレビがプロ野球中継(巨人戦)を放送することがあるが、視聴率は非常に低い。だんだん競技人口も減ってきている。

 国会の議席で譬(たと)えれば、かつては絶対安定多数だった野球の人気は、今では単独過半数を取れなくなっている。その分、日本人のスポーツの好みはサッカーやバスケットボールなどに「多様化」している。

 一方、日本のマスコミ企業(一般紙や地上波テレビ,スポーツ紙)は、例えば「朝日新聞」が夏の甲子園(高校野球の大会)を主催していたり、「読売新聞」が読売ジャイアンツ(プロ野球球団)を経営していたり……等々、野球の興行に自ら関わっている。

 また、相互に監視、批評しあう関係にあるべきマスコミ企業は、いわゆる(海外では禁じられている)クロスオーナーシップというもので、「一般紙/地上波テレビ/スポーツ紙」が資本的に系列化されている(例えば「読売新聞/日本テレビ/スポーツ報知」といった具合に)。

 加えて、アメリカ合衆国(米国)のメジャーリーグベースボール(MLB)に莫大な放映権料を支払い、これをBSや地上波で放送し、毎年、春・夏の甲子園=高校野球の大会を地上波で全試合放送している公共放送のNHKがある。

 つまり、日本のマスコミ企業は総体として野球とは利害関係者の間柄で、一蓮托生、癒着している。野球は、日本のマスコミ企業総体にとって「自社コンテンツ」なのである。

 そんな日本のマスコミにとって、あくまで日本のナンバーワンスポーツは「野球」でなければならない。新しく台頭したサッカーやバスケットボールであってはならない。日本人の「野球離れ」は絶対に食い止めなければならない。

 だから、欧州サッカーの遠藤航や三笘薫、久保建英、バスケットボールNBAの八村塁や渡邊雄太といった日本人選手の活躍など、半ば無視する。否、落ち目の野球人気を支えるためには、無視してかまわない。

 翻って、日本のマスコミは、「日本人の野球離れ」を食い止めるために、大谷翔平に関しては毎日、洪水のように大々的に報道している。否、落ち目の野球人気を支えるためには、報道しなければならない。

 マスコミは、あたかも彼が「世界的なスーパースター」であり、その活躍に「全米が熱狂」しているかのように褒めそやす。
  • 参照:金子達仁「[2021年野球界を総括]大谷翔平は,日本が生んだ史上初の世界的スーパースター」(2021年12月28日)https://media.alpen-group.jp/media/detail/baseball_211228_01.html
 日本のマスコミは、大谷翔平は「世界的なスーパースター」であると言いくるめることで、日本の内外で野球がナンバーワンスポーツであるかのように言いくるめる。

 日本のマスコミが大谷翔平のことを過剰に報道するのは、構造的な問題なのである。

「#大谷ハラスメント」とは「#野球ハラスメント」である
 しかし、笛吹けど踊らず。

 マスコミがどんなに大谷翔平をゴリ押ししても、野球はかつてのような国民的な了解事項ではないのだから、野球に関心のない層は白けるばかり。

 サッカーなど他のスポーツのファンも、野球が世界的な人気スポーツではないこと、本場・アメリカ合衆国でも野球の人気は低迷していることを知っているから、これまた白けるばかり。

 ……それどころか、反感を抱く。
  • 参照:女性自身「大谷翔平 電撃結婚で話題独占も…一部では〈大谷ハラスメント〉とうんざりムード指摘する風潮」(2024/03/01)https://jisin.jp/sport/2299687/#goog_rewarded
 つまり、大谷翔平の「#大谷ハラスメント」とは、実は「#野球ハラスメント」のことなのである。大谷翔平への嫌悪とは、実はマスコミがゴリ押しする野球というスポーツへの嫌悪なのである。マスコミによる野球ゴリ押しの象徴が、大谷翔平なのである。

 それはあくまで劣化した日本のマスコミのせいであって、大谷翔平のせいではないと彼を擁護する人もいる。だが、大谷翔平の(有形無形の)多大な報酬は、マスコミの偏向した過剰な報道によってもたらされているのである。彼はマスコミに多大な恩恵を受けてきた。問題の一端に大谷翔平は関与している。

 自身の結婚にまつわる記者会見では、大谷翔平はプライベートの領域を弄(まさぐ)られることは本意ではないかのような応答ぶりであったと聞く(映像を見ていないから実際はどうであったかは当ブログは知らない)。<1>

 それを長谷川良品などは「マスコミの玩具に,商品化されていることへの抵抗とも感じる」などと褒めそやすのである。

 ……が、しかし、本当に日本のマスコミの玩具化、商品化、見世物小屋の珍獣扱いを拒むならば、大谷翔平は「そんなに僕ばかりじゃなく他のスポーツも取り上げて下さい」とか、「そんなに僕ばかりじゃなく政治や経済や社会の他のニュースも取り上げて下さい」とか公言したらどうか?

 まあ、大谷翔平がそんな(良い意味で)トンパチな言動をする人間であるとは、私たち真っ当なスポーツファンのほとんどは期待はしていないが(笑)。

 傍目から見て、大谷翔平はとてもイノセントな人に思える。しかし「無邪気であること自体が犯罪的である」との古人の格言もある。その伝で言えば、大谷翔平はとてもイノセントな人である。





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