スポーツライター玉木正之氏の知的誠実さを問う

日本のサッカーカルチャーについてさまざま論じていきたいと思っています。

タグ:ユニフォーム

アディダスジャパンのマーケティングが当たった!

 ……コアなサッカーファンには、あれだけ酷評され、嫌悪されていた、アディダスジャパン(サッカー日本代表のサプライヤー兼スポンサー)デザインの、日本代表ユニフォーム最新モデル=俗称【迷彩】が、これまた酷評されていた先代モデル【ジンベエザメ,千人針などとも】の2.5倍以上(!)の売れ行きだという話が、なかなか受け入れられない。
  • 〈日本晴れ〉の日本代表新ユニは大人気! 初動売り上げがW杯モデル以外では過去最高(2020.01.15)
  • アディダスジャパンのサッカー日本代表ユニフォーム【迷彩】が売れているらしい(2020年01月16日)
 その昔、「♪コアなファンを捨ててでもタイアップでヒット曲が欲しい……」と皮肉って歌ったのは、筋肉少女帯の大槻ケンヂだった。
  • 筋肉少女帯「タイアップ」歌詞(アルバム「UFOと恋人」より)
 要は、コアなサッカーファンを切り捨ててでも、ファッション性(?)を優先し、2020東京オリンピックをも見込んだライト層向けのマーケティング(?)を敢行した、アディダスジャパンのサッカー担当=西脇大樹氏のビジネスが当たったということになる。*

サカダイ「アディダス西脇大樹氏インタビュー」2
【迷彩ユニのプレゼンに臨むアディダスジャパンの西脇大樹氏】

 西脇大樹さん、おめでとう。

 しかし、コアなサッカーファンの生き霊はなかなか成仏できないだろうが。

自衛隊広報誌『MAMOR(マモル)』のコスプレ・グラビアから
 サッカーファンは、あの青い【迷彩】ユニフォームにはどうしても馴染めない。そこで少しでも目を慣らすために、一計を案じることにした。

 産経新新聞社系の版元=扶桑社が、『MAMOR(マモル)』という防衛省・自衛隊の広報誌を月刊で出版している。

 この雑誌に「防人たちの女神」という、若手女性アイドル・モデル・女優に自衛隊の制服や作業服を着せるという、これはどう見ても「特殊な趣向を満足させる」という意図(しかし否定できない)があるとしか思えないコスプレ・グラビアページがある。

 このページの歴代モデルを探ると、前田敦子、眞鍋かをり、壇蜜……などといった大物がおり、足立梨花、逢沢りな、丸高愛実といった、サッカーファンにもなじみのある人たちも名を連ねている。

 ……で、この月刊『MAMOR(マモル)』2016年3月号に登場したのが、グラビアアイドル(今や女優と言わないと御本人の御機嫌を損ねてしまうか?)の柳ゆり菜さんだったのである。

柳ゆり菜と岩渕真奈の青い迷彩服
 ちょうど青い【迷彩】服を着た若い女性の写真を探していたら、偶然に行き当たったのが柳ゆり菜さんだった。


  • 『MAMOR(マモル)』2016年3月号(1月21日発売)FEATURE
 その中から、これは……と思う写真を選んでみる。

グラビア:柳ゆり菜『MAMOR』2016年3月号
【青い迷彩服:柳ゆり菜『MAMOR(マモル)』2016年3月号より】

 次に、なでしこジャパン(サッカー女子日本代表)の青い【迷彩】ユニフォームを着た美形の選手、例えば岩渕真奈選手の写真を選んでみる。

岩渕真奈「なでしこジャパン迷彩ユニフォーム」アディダス提供
【青い迷彩ユニフォーム:岩渕真奈(なでしこジャパン)】

 この2つを見ていくことで、少しは青い【迷彩】ユニフォームを受け入れられるのではないか……と考えたのである。

 さらに両者を並べてみた……。

迷彩ユニフォーム女子(岩渕真奈&柳ゆり菜)
【青い迷彩服:岩渕真奈(左)と柳ゆり菜】

 ……うーむ。若く美しい女性の海上自衛隊の青い作業服(右)はとても素晴らしいが、若く美しい女性フットボーラーの青い迷彩ユニフォームの方は、やっぱり受け入れられない。個人的には。

 これを南野拓実選手(!)たちが着用して、2020東京オリンピック(?)やカタールW杯アジア予選の試合でプレーするのかと思うと、どうしても気の毒に思えてしまう。

 ひとつだけ分かったのは、岩渕真奈選手が海上自衛隊の作業服を着たら、別の意味でカッコイイのではないか……ということであった。

(了)




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西脇大樹さん,おめでとう!
 2019年11月の発表当初、サッカーファンから轟轟たる非難を浴びていた、サッカー日本代表のユニフォーム【迷彩】モデル……。

迷彩柄(サッカー日本代表ユニフォーム2020)
【2019年11月からのサッカー日本代表ユニフォーム】

 ……もとい! サプライヤーのアディダスジャパンに言わせると「日本晴れ(にほんばれ)」モデル*、または「スカイコラージュ」モデルの売れ行きが、あにはからんや! 極めて好調なのだという。
  • 〈日本晴れ〉の日本代表新ユニは大人気! 初動売り上げがW杯モデル以外では過去最高(2020.01.15)
 報道によると、W杯が行われない年のモデルとしては、初動1カ月のユニフォームの売り上げが過去最高を記録(!)。2018年のロシアW杯に向けて発売された「勝色(かちいろ)」モデルの初動で上回っており(!)、これはアディダスとして快挙とのことだ。

サッカー日本代表ユニ2018
【サッカー日本代表ユニフォーム「勝色」モデル】

 一説に、アディダスが直接販売している分だけでも、初動1カ月の売れ行きが前回比250%以上と考えられ、一般からの評価は高いと考えられる。さらには、2020年の東京オリンピックに関わる需要もあるのではないか?

 マーケティングの専門家ではないので、本当のところはよく分からないのだけれど。

 この「報道」は、おそらくアディダスジャパンからのリークなのだろう。しかし、この「一般からの評価は高い」という表現は微妙だ。つまり、「一般」ではない、コアなサッカーファンからの評判はやっぱり悪いのではないか、とも考えられるのだが……。

 とにかく、アディダスジャパンのサッカー開発担当の西脇大樹さん、おめでとう!

サカダイ「アディダス西脇大樹氏インタビュー」2
【「迷彩」のプレゼンに臨む西脇大樹氏】

デューダ「アディダス西脇大樹氏インタビュー」
【転職サイトでインタビュー記事に登場した西脇大樹氏】

 その昔、「♪コアなファンを捨ててでもタイアップでヒット曲が欲しい…」と皮肉って歌ったのは、筋肉少女帯の大槻ケンヂだった。
  • 筋肉少女帯「タイアップ」歌詞(アルバム「UFOと恋人」より)
 つまり、コアなサッカーファンからあれだけ反発を買っても、結局のところ、一般に【迷彩】ユニが商品として売れれば、何の痛痒も感じないのでしょう。きっと。

サンフレッチェ広島「#紫を取り戻せ」問題にも悪影響?
 これでアディダスジャパンはますます調子づいて……、もとい! 自信を深めていくのではないか。

歴代のサッカー日本代表ユニフォーム(「Wikipedia」より)
【歴代のサッカー日本代表のユニフォーム】

 何よりサッカー日本代表のユニフォームのデザインは、大仰なコンセプトを具象化してデザインに盛るトンデモ奇天烈路線が、今後とも継続しそうな気がする。

 アディダスジャパンも、本来のクライアントであるはずの日本サッカー協会(JFA)も、ライト層のサッカーファンも、完全に「薬が回っている」状態だ。

 さらにJリーグ・サンフレッチェ広島のサポーターを悩ませる「#紫を取り戻せ」問題にも悪影響を与えるのではないか?

サンフレッチェ広島2020年アウェイユニフォーム
【サンフレッチェ広島2020年セカンドカラー】

 もっとも、コアサポとライト層の比率が日本代表とは違うから、Jリーグのクラブはまた違うのかもしれないが。

結束の一本線~後藤健生さんの嘆き
 アディダスジャパンのサッカー日本代表のユニフォームのデザインで、トンデモ奇天烈路線が確立したのは、2012年の悪名高き【結束の一本線】モデルである。

結束の一本線_サッカー日本代表
【サッカー日本代表の「結束の一本線」モデル】

 今回、パソコンをいじくっていたら、後藤健生さんが【結束の一本線】モデルの論評している記事をサルベージした。
 そもそも、日本代表のユニフォームがどうしてブルーなのかといえば、元は東京大学(かつての東京帝国大学)のシンボルカラーだった。

 それが、日本代表(全日本選抜)がブルーのユニフォームになった理由だったのだ。

 つまり、本来なら、日本代表のシャツはライトブルーであるべきなのである。

 日本代表のユニフォーム……そう簡単に色調は変えないで、伝統を大事にしてもらいたいのである。

 もう色調の変化はストップしよう!

後藤健生「日本代表ユニフォームのブルーはなぜどんどん濃くなっていくんだろう?」
(2012年01月12日)
 昔からサッカーを見ているファン、コアなサッカーファンほど、アディダスジャパンのサッカー日本代表のデザインには不満を持っているのである。

サッカー文化~イタリアの洗練と日本の野蛮
 【迷彩】モデルの売れ行きを伝える、くだんのアディダスジャパンのリーク報道である)では、海外からの評価も非常に高く、外国人の訪日観光客(インバウンド)の売り上げも多いとの由……。

 ……さはさりながら。このインバウンドの中には、イタリア人やフランス人も含まれるのだろう。イタリア代表、フランス代表ともに、チームカラーは日本と同じ「青」である。

 しかし、イタリアやフランスが、日本みたいな【迷彩】柄にするなどと言われたら、嫌だろう。所詮は、東アジアのサッカー弱小国の代表チームだから「Fackin' Cool!」とかテキトーなことを言っていられるのである。

 例えば、アズーリ=サッカー・イタリア代表のユニフォームを見ていこう。

azzurri1968
【サッカー・イタリア代表1968年】

azzurri1990
【サッカー・イタリア代表1990年】

azzurri2006
【サッカー・イタリア代表2006年】

2019年U20W杯イタリア代表
【サッカー・イタリアU20代表2019年】

 イタリア代表のユニフォームは、いつの時代も見事なまでにイタリア代表としてのアイデンティティ=一貫性を持持っている。

 翻って、日本代表のそれは無節操きわまりない。

 当ブログは、本来「自虐的な日本サッカー観」を揶揄・批判するサイトである。

 しかし、ことデザインに関しては、日本のサッカー文化は浅薄なのではないかと暗澹たる思いになる。

(了)




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早稲田大学ラグビー部の復活,サッカー森保ジャパンの失速
 「新国立競技場」で早稲田大学が「大学ラグビー日本一」なんて、あまりにもよく出来た展開である。スポーツの強豪大学ではない「名門大学のスポーツにおける勝利」を欲していたマスコミの皆さんは大喜びだろう。

 当ブログは、日本のフットボールシーンにおいて、サッカーの優勢な時代はラグビーが劣勢で、サッカーが劣勢な時代はラグビーが優勢になる。時代が交互に入れ替わる……などという与太話を書いたことがある。
  • 平尾誠二氏とサッカーとラグビー(2016年10月24日)
 しかし、2019~2020年に至って、ついに日本のフットボールでもサッカーとラグビーが並び立つのではないかと期待していた。

 だが、ここに来て、サッカー日本代表=森保ジャパンの勢いが萎(しお)れてきている。

醜いデザインではフットボールが弱体化する
 森保ジャパンが、にわかに弱体化してきたのは、ちょうど、サッカー日本代表のユニフォームが、これまでさんざん醜いデザインを送り出してきた、かの悪名高きアディダスジャパンが手掛けた、かの醜き「迷彩」になってからのことである。

 今回の直接の担当者は、アディダスジャパンの西脇大樹氏だ。

サカダイ「アディダス西脇大樹氏インタビュー」1
【サッカー日本代表「迷彩」ユニフォーム】

サカダイ「アディダス西脇大樹氏インタビュー」2
【「迷彩」デザイン担当のアディダスジャパンの西脇大樹氏】

 F1グランプリなど、モーターレーシングの世界では「速いレーシングカーは美しい,遅いレーシングカーは醜い」などと言われる。
  • 【特集:史上最も醜いF1マシン10選(1)】ドライバーが灼熱地獄に苦しんだグラウンドエフェクトカー(2018.02.14)
 それでは、生身の人間がプレーするスポーツ=フットボールの世界はどうか?

 あえて断言する。「醜いデザインをまとったフットボール(サッカー,ラグビー)は弱い」と。森保ジャパンが弱くなったのは、アディダスジャパンの(西脇大樹氏が手掛けた)醜い「迷彩」ユニフォームに変わったから(!?)である。断言する。

スポーツにおけるデザインの「作法」とは?
 どういうことか? 日本ラグビー界の名門=早稲田大学ラグビー部のジャージ(ユニフォーム)が、一時、サッカー日本代表と同様、過剰な思い入れやコンセプト優先の実に醜いデザインであった。しかも、弱かった。
新ジャージに込めた意味
「鎖」早稲田大学ラグビーコンセプト2016
【「鎖」早稲田大学ラグビーコンセプト2016】リンク先

「鎖」ジャージ(早大ラグビー部)2016
【「鎖」ジャージ(早大ラグビー部)2016】リンク先

 早稲田大学ラグビー蹴球部のプライドでもある赤黒のジャージは、ファンの方々に私たちの存在感を示す1つのシンボルでもありますが、今回、世界的に高い評価を得ているデザインオフィス「nendo(ネンド)」〔デザイナー・佐藤オオキ氏=早大OB=が主宰〕のみなさんにデザインをお願いしたことによって、ジャージのデザインは大きく変わりました。
 しかし、見て分かるように、この早稲田ラグビーのデザインは酷い。ラグビーファンの評判も良くなかった。

 さらに言えば、この当時の早稲田大学ラグビー部は弱かった。当時、大学ラグビー選手権を連覇していた帝京大学にはチンチンにやられていた。

 だいたい、世間一般の一流デザイナーに依頼して、ガンバリましたというデザインに限って失敗作である。かつての福岡ダイエー・ホークス、ロンドン五輪のサッカー英国代表なども同様である。

 スポーツのデザインには、スポーツのデザインの「作法」というものがある。あえなく、このデザインを導入した早大ラグビー部の監督は退任することになった。

早稲田大学ラグビー部~デザインの修正と復活
 だが、これを改め、正統なデザインに戻したら、なんと強さが復活した。

 2018年、創部100周年を迎えた早稲田大学ラグビー部は、ジャージのデザインを古典的なスタイルに修正した。
早稲田大学ラグビー蹴球部の新ジャージを作製~創部100周年を記念…
100周年記念ジャージ(早大ラグビー部)2018
【100周年記念ジャージ(早大ラグビー部)2018】リンク先

 アシックスジャパンは、このたび、早稲田大学ラグビー蹴球部が今季の公式試合などで着用するジャージを作製しました。

 今回のジャージは、同部が創部100周年を迎えることから、歴史と伝統に基づいたクラシカルなデザインとしたのが特徴で、エンジ〔海老茶ではないのか?〕と黒のボーダー柄にホワイトの襟を配しています。
 こちらのデザインは概(おおむ)ね好評で、このシーズン、早稲田大学ラグビー部のパフォーマンスや成績も、かなり自尊心を回復するところまで行ったのである。

 そして、次のシーズン、2019年度にラグビー大学選手権で優勝したのは前述のとおり。

 「たかがデザイン」と言うなかれ……で、その良し悪しによってチームのパフォーマンスには深い影響を与える。

 実は、早稲田大学ラグビー部に関して、醜い「鎖」デザインも、クールな創部100周年のクラシカルなデザインも、サプライヤーは同じ「アシックス」なのである。

 やれば、出来るというか、クライアント(例えばJFAでも,Jリーグのクラブでも)が「こうしてください」と言えば、サプライヤーはそれに応える実例がある(少なくともアシックスに関しては)。

 そのことを、日本のフットボールファン(サッカー,ラグビー)は覚えておいていい。

 特に、アディダスジャパンに酷いデザインを押し付けられたサッカー日本代表ナイキジャパンに酷いデザインを押し付けられたサンフレッチェ広島のファンやサポーターは……。

(了)




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 簡単な話だ。「ゆるキャラ」に譬(たと)えると、理解が早い。

 サッカーファンは、「ゆるキャラ」で言えば「ひこにゃん」や「くまモン」みたいな、みんなが愛らしいと感じるマスコットキャラクターを創作してほしいのである。



 ところが、アディダスジャパンのサッカー担当が仕上げてくるサッカー日本代表ユニフォームは、毎回毎回「せんとくん」みたいなキワモノばかりなのである。

せんとくん(奈良県公式)
【せんとくん:奈良県マスコット】(http://www.pref.nara.jp/36906.htm)

 「せんとくん」は賛否両論の嵐にさらされた。もっとハッキリ言えば散々な悪評を被(こうむ)った。

 一見して「せんとくん」は「気持ち悪い」、可愛くない。特に「せんとくん」で目立ったのは、仏教の尊格の頭に生やした「鹿の角」である。

 これは、明らかに「異様」であり、御仏への恭敬(仏教)を侮辱した「不謹慎」なものであるとされた。

 しかし、この「鹿の角」には作者のこだわりがある。

 それはアディダスジャパンの日本代表デザインの、あの醜悪な「結束の一本線」やら、雑巾の縫い目だの千人針だのと罵られた「勝色(刺し子)」やら、このたび酷評されまくっている「迷彩」だの……といった奇怪なオブジェへのこだわりと共通する。

 そして、このこだわりこそ、賛否両論の種である。

 先代のサッカー日本代表デザインである「勝色(刺し子)」モデルのデザイン担当、アディダスジャパンの山口智久氏は、「これまでどんなモデルを発表しても、必ず賛否両論は起こりました(笑)」などと嘯(うそぶ)く。




 だが、「賛否両論」が起こったということは、要は「せんとくん」と同じで非常に評判が悪いということである。

 一説に、やはり……というか「せんとくん」のライセンス料収入は芳しくないと聞く。


 アディダスジャパンも、つまり、「ひこにゃん」や「くまモン」のような、みんなが愛らしいと思えるキャラクターが創ることが出来ればもっと儲かって良いはずなのだが、あいにく「せんとくん」のような奇天烈な造形しかリリース出来なくなっている……。

 それは、日本のサッカーファンにとっても大いなる不幸である。

(この項,了)




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やっぱり「迷彩」ユニフォームへの悪評続出!
 2019年11月からのサッカー日本代表のユニフォームのデザイン、通称「迷彩」……おっと違った、自称「スカイコラージュ」または「日本晴れ(にっぽんばれ)」。案の定、背番号が見にくい、前面の胸番号が見にくい。例の「迷彩柄」は目がチカチカするようだ、とにかく視認性が悪い……と、SNS上では悪評で溢(あふ)れている。




 まあ、河治良幸氏も「個人的にユニ批判なんてしたくない」とか、つまらぬ申し訳を前置きしないで、アディダスジャパンの日本代表デザインがおかしいと思ったら、素直に「おかしい」と書けばよいのだ。実際、後藤健生氏や西部謙司氏といったベテランのサッカージャーナリストは、率直に違和感を表明するぐらいのことはやっている。

 こんなことを言っているから、やっぱり日本のサッカーマスコミは、サッカー日本代表のサプライヤーであるばかりでなく、大口のスポンサーでもある「アディダスジャパン」の批判はやり難(にく)いのではないか……という疑念が消えないのである。サッカーファンは、特に2018年のハリルホジッチ氏の更迭以来、かなり疑心暗鬼になっている。

 それはさておき、今回は、現行のサッカー日本代表デザイン「迷彩」モデルの背番号の視認性が悪い理由に絞って話を進める。その理由は、きわめて単純。デザイン(彩色,意匠)の理論に適っていないからだ。

サッカーのデザインは紋章や旗と同じである
 ふとしたきっかけで「西洋紋章学」の本をいくつか読むようになった。この「まなざし」から、欧米のサッカー(やラグビー)のユニフォームやエンブレムのデザインを観察すると、それは西洋紋章学(heraldry)や旗章学(vexillology)のデザイン理論ときわめて親和性が高いことに気が付く。

西洋の紋章とデザイン
森 護
ダヴィッド社
1982-04


 例えば、ユベントスやACミラン、インテルミラノのような縦縞、フラメンゴやセルチックのような横縞、リーベルプレートのたすき掛け、ベレスサウスフィエルトのV字、フェイエノールトの縦二分割……などといった意匠は、すべて西洋紋章学のそれに由来する。

『サッカー人間学』202頁
【『サッカー人間学』202頁より】

 要するに、サッカーのユニフォームのデザインとは、紋章や旗のそれと同じものだ。そのルールの基本は簡単だ。紋章学の基準に照らし合わせて「迷彩」ユニフォームの背番号の彩色は間違っている。だから、当然、視認性が悪いのである。

ドイツ国旗の黄色は実は「金」色
 西洋の紋章は多彩多色であるが、一方、使っていい色には厳格な決まりがあり、いくつかのグループに分かれる。まず「金属色」(metals)で、これには「金」と「銀」がある。金は「黄」で代用可、銀は「白」で代用可である。
金属色(metals)
  • 金(黄で代用可)
  • 銀(白で代用可)
 上から黒・赤・黄(■)の三色旗になっているドイツの国旗の黄色部分は、実は「金」である。金属の光沢が、昔の印刷技術では表現が難しかったために、金は黄、銀は白で代用できるルールになっている。

サッカーで使われる色,使っていい色
 続いて「原色」(colours)である。
原色(colours)

森護『西洋の紋章とデザイン』口絵4頁
【森護『西洋の紋章とデザイン』口絵4頁より】
 ……と、ここまで来ると、サッカーのユニフォームに使われている色が、おおむねこれでカバーされていることが分かるだろう。

 すなわち、茶系のようなくすんだ色、周囲から埋もれやすい色は、紋章や旗に用いられることは基本的になく、サッカーのユニフォームでもきわめて少ない。デズモンド・モリス博士の大著『サッカー人間学』でも、英国サッカー界にその実例はあるが、あくまで例外であることが紹介されている(下記の写真参照)

『サッカー人間学』201頁
【『サッカー人間学』201頁より】

サッカー人間学―マンウォッチング 2
デズモンド・モリス
小学館
1983-02


The Soccer Tribe
Desmond Morris
Rizzoli Universe Promotional Books
2019-03-26


 ましてや、迷彩柄など「もってのほか」である。

「迷彩」ユニフォームの背番号はルール違反!?
 ここで、ひとつのルールが登場する。西洋紋章学では「金属色の上に金属色を重ねてはいけない=彩色ルール違反」また「原色の上に原色を重ねてはいけない=彩色ルール違反」という決まりがある。

 つまり「金=黄」(金属色)の上に「銀=白」(金属色)を重ねるのはいけない。彩色ルール違反である。その逆もいけない。あるいは「赤」(原色)の上に「青」(原色)を重ねてはいけない。彩色ルール違反である。その逆もいけない……等々(詳しくは下記の写真参照)。

森護『西洋の紋章とデザイン』口絵3頁
【森護『西洋の紋章とデザイン』口絵3頁より】

 その理由は簡単。視認性が悪いからだ。ここまで来て、勘のいい人は理解できたはずである。*


 現行の日本代表ユニフォーム「迷彩」モデルの背番号は、原色(青)の上に原色(赤)を重ねるという、わざわざ視認性を悪くする彩色ルール違反を犯しているのである(申し訳程度に白く縁取りがしてあるが,実際の使用では全く効果的ではない)。**

デザインの基本を知らないアディダスジャパンの西脇大樹氏
 西洋紋章学や旗章学には、デザインすなわち意匠・彩色に関して厳格なルールがある。一見するとそれは面倒で不自由な制約のようにも思える。

 しかし、そもそも紋章や旗は、いにしえの西洋の「野戦」において、両軍入り乱れて戦う敵味方の判別や自軍の忠誠心を高めるために創り出され、用いられたものであった。そのためにはデザインに優れた視認性や識別性がなければならない。

 西洋紋章学・旗章学のルールは、そのために歴史や文化の研鑽(けんさん)を積んできた。不自由なようであるが、むしろルールを守ることでそのデザインは優れた視認性、視認性、象徴性、品位、そして美しさすら放つようになる。

 フットボールの試合もまた「野戦」と言える。サッカー(やラグビー)のような競技場の中で両軍入り乱れてゴールを奪い合うゲームで、そのエンブレムやユニフォームのデザインが西洋紋章学・旗章学のルールに準じたものになるのは、理の当然であった。

 ところが、アディダスジャパンの「迷彩」モデルを担当した西脇大樹氏は、こうしたデザインの基礎を知らない。


 デザイン本来の在り方や視認性などの機能を犠牲にしてまで、アディダスジャパンの担当者が捻(ひね)り出す「コンセプト」を優先させるのである。

 だから、「迷彩」柄ユニフォームの背番号の視認性が極端に悪くなる。見にくい=醜い。美しくない。

サカダイ「アディダス西脇大樹氏インタビュー」2
【アディダスジャパンの西脇大樹氏(1)】

デューダ「アディダス西脇大樹氏インタビュー」
【アディダスジャパンの西脇大樹氏(2)】

 こうした悪辣(あくらつ)なやり方には、肚(はら)の底からウンザリさせられる。

(この項,了)




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