スポーツライター玉木正之氏の知的誠実さを問う

日本のサッカーカルチャーについてさまざま論じていきたいと思っています。

タグ:ネーションズリーグ

日本代表戦はどちらが面白い?
 2019年ラグビーワールドカップ日本大会。そしてジャパン(日本代表)の快進撃。日本の多くの人々が、ラグビーフットボールのプリミティブな面白さを知った。

 ネット上では「ひょっとしたら,サッカー日本代表戦よりもラグビー日本代表戦の方が面白いのではないか? 今回のラグビーW杯で,日本人はそのことに気が付いてしまったのではないか?」などという議論が起こったらしい(当ブログは未見)。

 サッカーの日本代表戦と、ラグビーの日本代表戦、どちらが面白いとは、一概には決められない。ともに、問題はワールドカップ本大会以外の国際試合である。

 現在、サッカー日本代表にとって最も大切な試合は、ワールドカップ本大会の試合ではなく、W杯アジア予選の特に最終予選である。……と、後藤健生さんが新国立競技場問題のシンポジウムでの発言していたらしい。

 勝つか、負けるか。W杯本大会に行けるか、行けないか。ハラハラ、ドキドキ。サッカーの日本代表戦は、とても、分かりやすい。

テストマッチ≒国際親善試合の価値を見出すという共通の問題
 その点、ラグビーは、少しわかりにくいところがあるかもしれない。

 W杯本大会出場権そのものを獲得するために、オーディエンス(ファン,サポーター,テレビ視聴者)が、日本代表を応援してスリリングな体験をすることは、あまりない。

 ラグビーW杯は本大会でプールステージ(1次リーグ)で5か国中3位に入れば、次回本大会の出場権をシードされるからである。

 仮に予選に回ったとしても、それほど予選不通過を恐れる必要はない(はずだ)。

 つまり、今後のラグビーの日本代表戦の多くは、ワールドカップが絡まない国際試合(テストマッチ)である。

 詳細は省くが、必要なのは、日本の対戦相手がティア1の国であっても、ティア2の国であっても、それぞれのテストマッチの持つ大切な意味合いを、オーディエンスに理解していただくことである。

 そして、メディアはそのことをしっかり啓蒙する必要がある。

 サッカーの問題は、ワールドカップやアジアカップが絡まない、ノンタイトル戦である国際親善試合の「再価値化」である。

 これにはマンネリ感、停滞感が漂っている。

 当ブログは、現状を打破するために、欧州ネーションズリーグに倣(なら)った、日本が参加する、独自のネーションズリーグの構想妄想を、ブレスト(ブレーンストーミング)的に試みたことがある。

 日本サッカー協会(JFA)は、これからも顔見世興行的な、「キリンチャレンジカップ」と称した、微温的な国際親善試合を続けていくのだろうか?

(了)




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欧州ネーションズリーグと日本代表への影響
 2018年から始まったヨーロッパ・サッカーの新しい国際試合の大会、UEFAネーションズリーグ(欧州ネーションズリーグ)が好評だ。

 好評すぎると日本代表(2018年12月20日発表,FIFAランキング50位,1414pts.以下同様)が困るのは、これにより、欧州の強豪相手に国際試合(親善試合)で力試しをする機会が減ることや、いざ、欧州強豪国との対戦が実現したとして、対戦相手国には所詮は親善試合だとモチベーションの低下が懸念されているからである。

UEFA_Nations_League

 したがって、日本サッカー界も欧州の状況の変化を受け入れて、北中米や南米、アフリカ勢との対戦を増やすなり、アジアの有力国を集めて新しい大会を創設するなり、これまでとは違う代表強化の方法を考えるより他はない……と言われている。

 それならば……と、今後、サッカー日本代表が参加するべき国際試合のリーグ戦の形を適当に構想(妄想)してみる。ここでは、日程の事情、スポンサーの事情、対戦相手国の事情、費用と対価の事情、等々を鑑みての実現性は一切考慮しない。あくまでブレインストーミングとしての問題提起である。

この件で韓国とは手を組みません
 サッカーにおける韓国(FIFAランキング53位,1405pts)は、昔から日本の良きライバルであり、かつて日韓戦はとても楽しみだった。しかし、最近は政治的なトラブルが続いたり、感情的しこりが募ったりして、純粋にスポーツとして楽しめなくなった。かえって日韓戦が嫌になった……。こんなサッカーファンの書き込みをインターネットで読んだ。

 同感する日本のサッカーファンは多い。それも、いわゆる嫌韓、ネット右翼(ネトウヨ)、「保守」、「愛国者」といった人たちではない。レイシズムや右傾化には反対するが、しかし、スポーツの場には政治的問題は関係なく、日韓ともにフラットな関係でありたいと願う多くの人たちがそう思っているのである。

 加えて、昨今の韓国は反則やラフプレーが多い。大事な選手をケガさせられては大変だ。もはやスポーツとして楽しめないのである。この「ネーションズリーグ」から韓国はお引き取り願いましょう。触らぬ神に祟りなし。

金づるとしての中国?
 2018年ロシアW杯で見せつけた、中国(FIFAランキング76位,1317pts)企業のスポンサーマネーは魅力的だ。しかし、すでにE-1(EAFF E-1サッカー選手権)があるし、日本が中国と関わろうとすると、韓国が「俺らも入れろ」と出しゃばってくる気がする。同様に、日本が中東イスラム諸国とネーションズリーグを組もうとすると、やっぱり韓国が出しゃばってくる気がする。

 韓国とは組まないのが前提なので、中国の参加は保留とする。この「ネーションズリーグ」はアジアに拘泥しない。視点を変えて「太平洋」に目を向けるのである。

オーストラリアの参加は必須の前提となる
 韓国とは違って、オーストラリア(FIFAランキング41位,1436pts)の参加は必須である。2006年ドイツW杯の悔しい逆転負けや、2017年W杯アジア最終予選の快勝もあり、同じアジア連盟(AFC)のライバルである。そして、この「ネーションズリーグ」の一定の水準の維持と向上にオーストラリアの存在は欠かせない。

オセアニア「無風区」からニュージーランド
 オーストラリアとくれば、おなじ「オセアニア」のニュージーランド(FIFAランキング122位,1157pts)である。将来、W杯本大会の出場枠が48か国に増えて(こんなに規模を拡大して大丈夫だろうか?)、オセアニア連盟にも出場枠1か国が与えられるという。ここは事実上ニュージーランドの「無風区」だから、彼の国だって歯ごたえのある対戦相手を求めているだろう……。

 ……というか、ニュージーランドもアジアカップに参加すればいいのに、と思う。勝ったり負けたりするが、楽しいぞ。

C'mon, baby アメリカとカナダ
 これに北米からアメリカ合衆国(FIFAランキング25位,1497pts)とカナダ(FIFAランキング78位,1314pts)にご参加をいただく。

 アメリカ合衆国は、2018年ロシアW杯の出場は逃した。しかし、将来、FIFAワールドカップで優勝したいと真面目に考えている。そして、自国のサッカーリーグであるメジャーリーグサッカー(MLS)を世界最高峰のサッカーリーグにしたいとも考えている。

 カナダは、日本よりずっと早く1986年メキシコW杯で本大会初出場を果たしている。当時、旧北米サッカーリーグ(NASL)が破綻して、北米サッカーが最悪の状況にありながら、予選突破を果たした。

 アメリカ合衆国とカナダそしてメキシコは、共同開催で2016年W杯を共同開催する予定である(ネーションズリーグに関しては,メキシコは同じラテンアメリカの中南米にすり寄っていくだろう)。当然、米・加両国ともにサッカーの強化に力を入れている。

(仮称)パンパシフィック5か国対抗
 かくして、この「ネーションズリーグ」の顔ぶれがそろった。
  • 日本
  • オーストラリア
  • ニュージーランド
  • アメリカ合衆国
  • カナダ
 日本を含めた環太平洋諸国で同盟を組んで、ネーションズリーグの試合を行うことは、実はかつてラグビーでやっていたものだ。また5か国でこれを行うのも、現在のシックスネーションズ・ラグビーの前身「5か国対抗ラグビー」に倣(なら)ったものである。

 これで1シーズンをホーム2試合、アウェイ2試合、計4試合行う。1シーズン内にホーム&アウェイを行う必要はない。1シーズン毎にホームとアウェイを繰り返す。3か国では多様性を欠き、7か国では多すぎる。偶数ではホームとアウェイの試合数に違いが出る。5か国というのはちょうどよい規模である。

 サッカー日本代表のスポンサーである「キリン」は、ホームの試合を「キリンチャレンジカップ」として行う。一方、アウェイの試合は「キリンチャレンジツアー」(仮称)と名付けて行う。ラグビー日本代表のスポンサー「リポビダンD」(大正製薬)は、昨年2018年のイングランド遠征を「リポビタンDチャレンジツアー」と呼んでいた。

 それとも、キリンやアディダスジャパンをはじめとするサッカー日本代表のスポンサーたち、その背後に控える大手広告代理店「電通」は、時差の関係でアウェイの試合では、日本のゴールデンタイムで放送枠が取れない。そうでないとテレビ中継の視聴率が取れないとして、この「ネーションズリーグ」構想に難色を示すだろうか?

 そんなことを言っているから、2018年4月のハリルホジッチ氏更迭にまつわるスポンサーや電通の陰謀論が、いつまでたっても消えないのである。

(了)



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