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FIFA女子ワールドカップ2023(オーストラリア&ニュージーランド共催)は、大会を主催するFIFA(国際サッカー連盟)と各国のテレビ局との間で放映権料についての軋轢が生じ、開催直前まで本大会を放送するテレビ局が決まらないという異常な事態となった。
特にFIFAと欧州主要5か国(ドイツ,イギリス,フランス,スペイン,イタリア)、FIFAと日本との交渉は難航をきわめた。<1>
【広末涼子「大スキ!」MVより(写真と本文は関係ありません)】
当初、FIFAは放映権による収入を3億ドル(約417億円)と見込んでいたという。
しかし、実際には各国のテレビ局との交渉において当初の提示額を下回る金額での契約が相次ぎ、アメリカの経済紙であるウォール・ストリート・ジャーナルは「目標額を1億ドル(約139億円)以上も下回った可能性が高い」と報じている。
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同じサッカーでも男子と女子では、競技レベルに大きな格差がある。
女子ワールドカップの本大会に出場するナショナルチームでも、U-18の男子のクラブチームに負ける。それもかなりの大差で。
何よりスピードやパワーが全然違う。男と女(生物学的な男と女のことね)では筋肉の量が違うからだ。
その競技レベルの格差は、エンターテインメントとしての価値の格差にもつながる。
つまり、男子サッカーと女子サッカーの報酬には格差がある。平等ではない。
ちょうど、それはプロボクシングで体重が軽い階級よりも重い階級の方が報酬が多いことと似ている。
あるいは、同じサッカー・JリーグでもJ1、J2、J3で報酬に格差があることと似ている。
女子サッカーはフィールドのサイズを男子より小さくするとか、ボールを小さく軽くするとか、1チーム11人から12人に増やさないと面白くならない……と言われることがある。
とにかく、FIFA女子ワールドカップ2023のテレビ放映権交渉は、FIFAの目論見通りに行かなかった。目標額を大きく下回った。
……ということは、欧米のマスコミ企業は、ビジネスとしては女子サッカーや女子ワールドカップの価値を金額相当のモノであると冷徹に評価したということになる。
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ところが、欧米のマスコミ企業は、ジャーナリズム・評論としては競技レベルも違う、エンタメとしての価値も違う男女のサッカー、男女のワールドカップ、その報酬平等化を「一面的に正しいモノ」として、これを後押しするかのよう報じるのである。
- 参照:Bloomberg(Jennah Haque記者)「男女平等報酬へのキックオフ~サッカー女子W杯,20日豪とNZで開幕」(2023年7月18日)https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-07-18/RXRMKVT0AFB4
- 参照:CNN.co.jp「サッカー女子W杯~仏代表の拡散動画が発信する力強いメッセージ,豪代表は賞金の男女同額を要求」(2023.07.20)https://www.cnn.co.jp/showbiz/35206762.html
一方で女子サッカーの価値を低く見積りながら、一方で男女サッカー間の報酬格差をジェンダーフリーの問題としてその平等化を求める。
この欧米のマスコミ企業のダブルスタンダードは実に面妖である。あるいは唖然とさせられる。
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女子サッカーや女子ワールドカップというと、ジェンダーフリーやLGBTQに代表されるようなポリコレ的な話(行き過ぎた「政治的公正さ」のこと)が付いて回って、それでかえって鼻白むというサッカーファンがかなりいる。
こういう批判はSNSではかなり論じられているが、既存メディアで発言すると女性差別主義者呼ばわりされるという、とても窮屈な情況にある。
繰り返しになるが、そのくせ欧米のマスコミ企業は女子サッカー・女子ワールドカップへは男子サッカー・男子ワールドカップほどには金を出せないと(事実上)言っている。<2>
女子サッカー選手の待遇をもっとよくしようという話も、もっと事実を踏まえた議論が必要なのではないかと思う。
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