2023年シーズンのJ1はヴィッセル神戸の初優勝となった。Jリーグから新しいチャンピオンクラブが出たということは、サッカーファンとして嬉しい。
さて、アンチ・サッカー派の野球ファンから「サッカーの味方」「Jリーグの味方」だと思われているスポーツライターの玉木正之氏。1993年に『Jリーグからの風』という本を刊行し「〈Jの理念〉を支持せよ!!」と煽りに煽っていた玉木正之氏。
彼は、ヴィッセル神戸のJ1初優勝で何を語ったか?
玉木正之氏は、自身の公式サイトできわめて詳細で長文の日記(タマキのナンヤラカンヤラ)を公開している。そこで、ヴィッセル神戸がJ1優勝した2023年11月25日の日記を確認しておきたい。
当ブログの読者やサッカーファンは、これを全部読む必要はない(読むと疲れるし,ほとんど何も得るものはない)。日記の中で太字・朱字で示したスポーツ、特にサッカーやJリーグへの言及を確認するだけでいい。
2023年11月25日(土)
内田樹×白井聡『新しい戦前~この国の〈いま〉を読み解く』(朝日新書)読了。一番オモシロかったのは《第6章「暴力」の根底にあるもの》のなかに触れられていた教育論でしたね。《子供たち自身が自分で自分の心身を管理し抑圧している。その典型が「体育座り」です。膝を抱え込んで床に座る「体育座り」は自分の腕と脚を折りにして自分自身を縛り付ける体位です。胸が締め付けられているから深い呼吸はできない。手遊びができない。立ち歩きができない。子供たち自身が自分の身体を身動きできない状態(演出家の)竹内敏晴さんはこの「体育座り」を「日本の学校教育が子どもたちに及ぼした最も罪深い行い」だと批判していました(内田)》《戦わない人生に何の意味があるものか(白井)若者たちに直接「革命をめざせ」と語りかけてゆくしかないと思います。青春期に本気で取り組むことに「恋と革命」以外に何があるんだということをやはり社会的常識として言い続けておかなければいけないと思います(笑)(内田)》文中に(笑)と書かれていたとおり小生も思わず吹き出しましたけどその通りですね(爆)。最後にマスメディア批判がどーっと出てきてメディア(テレビ業界人)の「勇気の無さ」を批判されていた。《放送法の解釈変更で「停波もあり得る」と言われたらテレビ局は「やれるもんならやってみやがれ」と言えばいいだけなんですよね(白井)そうです。やればいいんです。「私どもの放送内容が気に入らないということで総務省の命令により本日ただいまより停波いたします。みなさんさようなら」とアナウンサーが言って画面がプツンと消えて暗転する。メディアが社会的にどういう役割を果たしているかを知らしめる上でこれほど劇的なチャンスはないと思いますよ(内田)》確かにその通りですけど新聞とテレビのクロスオーナーシップの酷さにも触れてほしかったですね。それに「スポーツウォッシング」の最先端としてのテレビの「働き」についても……ワン。ベッドを出て黒兵衛〔玉木正之氏の飼い犬〕と散歩。チョイと仕事をして昼飯後ビデオに溜まった録画番組の整理をしているとライザ・ミネリの来日公演のNHKの再放送なんてのを発見。見てしまう。ヤッパリ超一流のエンターテイナーの舞台は凄いですね。「キャバレー」にも「NYNY」にも感激。そしてJリーグヴィッセル神戸初優勝を見たあと大相撲。ヤッパリ霧島が一枚上手だったですね。まだわからないけど熱海富士との優勝決定戦を見たいですね。晩飯は遊びに来た長女とヨメハンと3人で大船のジビエ料理の店『アジト』へ。鹿の焼き肉と猪のぼたん鍋に舌鼓。アナグマのTボーンステーキは少々脂身が多くて参りいましたね(笑)。玉木正之「タマキのナンヤラカンヤラ」玉木正之「タマキのナンヤラカンヤラ バックナンバー 2023年11月」(2023年12月以降)
400字詰でほぼ3枚の文章を改行なしブッ続けで書いているが、驚くなかれ! 玉木正之氏が、サッカー、Jリーグ、ヴィッセル神戸J1優勝の話題について触れたのはたったの一言である。
1行にすら満たない。大相撲(九州場所)を含めてもスポーツに言及したのは2行程度である。
呆れた。あれだけ推奨しているはずのサッカーやJリーグの記述が、たったコレッポッチとは……。
よく言われることだが、玉木正之氏はスポーツの現場に足を運ばない。取材しない。そのことでスポーツライターの同業他者からの印象はハッキリ言って悪い。プロ野球の取材現場からはパージされたという説(広尾晃氏)があるが、それがいわゆる「取材」である必要はない。
いわば「フィールドワーク」として、1~2週間に一度でいいから、サッカー・Jリーグ、バスケ・Bリーグ、ラグビー・リーグワンなどに足を運んでいれば、玉木氏のスポーツ観ももっと豊かで説得力を持ったものになっているはずなのだ。
また、玉木正之のテレビの視聴環境は、どうやら無料で見られる地上波とBSだけらしく、DAZNやJスポーツ、GAORA、日テレジータス、スカイA……といった有料スポーツチャンネルに加入していないらしい。だから現場に行かないだけでなく、テレビでもあまりスポーツを見ていない。
だから「タマキのナンヤラカンヤラ バックナンバー 2023年2月」を読んでも、DAZNのみで放送した2023年2月17日(金)に開幕したJリーグ(開幕戦:川崎フロンターレvs横浜F.マリノス)の話題には触れていない。
玉木正之氏がヴィッセル神戸のJ1優勝について、ほんの一言でも触れたのは地上波テレビのNHK総合テレビで放送したからだ。NHKは放送しなかったら、開幕戦の時と同様、J1のヴィッセル神戸優勝に何も発言していなかっただろう。
そう思うと、またまた呆れる。
こんな人物が、日本のスポーツジャーナリズム、スポーツ評論の「権威」として発言しているのは、踏み込んだ言い方をしてしまうと……許せない。
玉木正之氏にとっては「Jリーグの理念」という器さえあれば中身の「サッカー」などどうでもいいのであろう。
†