周知のようにCOVID-19(新型コロナウィルス感染症)パンデミックの影響で2021年に「延期」になったわけだが、2020年8月9日(日)は、本来、2020東京オリンピックの閉会の日であったという(やはり最終的には「中止」しかないと思うけれども)。

 それはともかく、先日、NHK-BSプレミアムで市川崑が総監督をつとめた記録映画「東京オリンピック」を放送していた。

 その録画を視聴しての諸々の感想……。

記録か芸術か…の論争?
 この映画「東京オリンピック」は、従来の「記録映画」とは全く性質の異なる極めて芸術性の高い作品に仕上げた。そのため「記録か芸術か」という論争が沸き起こった。……と、いうことになっているが、あらためて見直すと、変な意味での「芸術性」の臭みを感じることなく視聴することができた。。

 すでに1936年ベルリン・オリンピックの記録映画、レニ・リーフェンシュタール監督の「オリンピア」二部作(民族の祭典,美の祭典)のような「芸術」的な作品はあったわけだし、どうしてそんな論争が起こったのか、今の感覚ではよく分からない。

 Jスポーツで「1966年ル・マン24時間レース 激突!フェラーリ対フォード」という記録映画を放送していた。
 これなどは、最近公開された劇映画「フォードvsフェラーリ」の元ネタになった1966年ル・マン24時間レースの、本物の公式記録映画であるが、いかにも記録映画であって少し無味乾燥なところがある。



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 スポーツのメガイベントの記録映画といっても、隅から隅まで細大漏らさず「記録」することはできない。なにがしかの素材の取捨選択など(演出)は必要になってくる。映画「東京オリンピック」は、退屈することなく視られる映画である。

スポーツにおけるナショナルカラーが定まっていない「日本」という不幸
 アイルランド(緑)、イタリア(青)、オランダ(橙)、ニュージーランド(黒■)……。映画「東京オリンピック」でも、おなじみのスポーツのナショナルカラーを確認することができた。本当にうらやましい。

 それに比べて、わが日本のスポーツにおけるナショナルカラー文化の不毛さよ。……と、毎度のことながら嘆きたくなる。これについては以前ブログで書いた。
 ブログのアクセス分析をやると、このテーマはかなり関心も高いようだ。

ニュージーランド代表がウォークライ「ハカ」をやっていた
 映画「東京オリンピック」では、ニュージーランド代表の選手たちが、ラグビー代表チーム・オールブラックスでおなじみのウォークライ「ハカ」をやっているシーンが3回くらい出てくる(特に最後の閉会式の場面)。ラグビー好きが見ると特に印象的だ。

 映画の制作スタッフは珍しい民族の習慣だと思って、この場面を本編に加えたのだろうか? ちなみにハカの種類は昔から舞われている「カマテ」であった。

選手はみんな「アマチュア」だった
 棒高跳び(当時は男子のみ)優勝、アメリカ合衆国のフレッド・ハンセン選手は歯科大学の学生、棒高跳びの棒に使う「グラスファイバーの湾曲と反発」に関する研究論文を執筆中……みたいなナレーションがあった。

 マラソン(これも当時は男子のみ)優勝、エチオピアのアベベ・ビキラは、皇帝親衛隊の軍人(階級は軍曹)。その他、出場したマラソン選手の本業は、印刷会社の会計係、大工、機械工、教師……などと紹介されるナレーションがある。

 当時、オリンピックに出場する選手(アスリート)は、協議することを営利を目的とせず、趣味として純粋に愛好しようとする「アマチュア」でなければならなかった。アマチュアリズムである……。

 ……と、こんなことを説明しても、世代的には何を言っているのかよく分からない人がいるかもしれない。

 周知にように、サッカーは昔からプロもアマチュアも同じように統括されており、アマチュアリズムに拘束されない独自の世界大会「ジュール・リメ杯 世界選手権」、後の「FIFAワールドカップ」を創設した。

ワールドカップの回想―サッカー、激動の世界史
ジュール リメ
ベースボール・マガジン社
1986-05T


 日本のサッカーは、長年このアマチュアリズムの制度と思想の両面で足かせになっており、それを打破するのに大変な苦労をした。ジャーナリズムだと、特に読売新聞の牛木素吉郎さんが、アマチュアリズムの打破を必死で啓蒙していた。

 どなたかスポーツ社会学の学者さんで、その辺の過程を詳しく追った研究書を出してくれる人はいませんか?

(了)





その他
 志村けんの「アイーン」のポーズをした「メキシコ式敬礼」とか、自転車のロードレース(都下八王子市)の農家の家が藁ぶき屋根だとか、表彰式の国歌演奏が自衛隊の音楽隊の生演奏だとか……いろいろと興味深いシーンがありました。