2020東京オリンピックまで、ちょうど、あと1年! ……というところで、新しい国立競技場が、どうにも採算が合わない「負の遺産」になりそうだという批判記事が出た。


 「告発」の主は、サッカージャーナリストにして和製サイモン・イングリスの異名をとるスタジアムおたくの後藤健生さんである。



The Football Grounds of Britain
Simon Inglis
HarperCollinsWillow
1987-04-06


The Football Grounds of Britain
Simon Inglis
HarperCollins Publishers Ltd
1996-05-14


The Football Grounds of Europe
Simon Inglis
HarperCollinsWillow
1990-04-02


 後藤健生さんの批判記事は、サッカー界隈にも衝撃を与えた。


 ところが、ここに来て日本サッカー協会(JFA)が、新国立競技場の運営権取得に名乗り出た……というニュースが出てきた。
サッカー協会、新国立の運営権取得に興味 田嶋会長明かす
2019.7.19

 東京五輪・パラリンピックのメインスタジアム、新国立競技場の大会後の民営化で、日本サッカー協会の田嶋幸三会長が19日、運営権取得に関心のある事業者への日本スポーツ振興センター(JSC)の意向調査に応募したことを明らかにした。「新国立を負の遺産としないためコンセッション方式〔公共施設を民間事業者が運営すること〕に興味がある。競技団体として唯一手を挙げた」と語った。

 新国立競技場は大会後に球技専用に改修される方針だったが、収益の柱と見込むコンサートが実施しにくくなることなどから〔陸上競技用の〕トラック存続の動きも出ている。

 田嶋会長は「コンサートも年に7回から10回しかできない。どうやって収益を上げていくか知恵を出し合わないと。サッカーでできること、欧州でのスタジアム運営方法のノウハウも含めて提案できる」と話した。

 この田嶋幸三会長の「立候補」が、どこまで妥当で賢明な申し出なのかはよく分からない。だからコンセッションの「採算性」とか専門外だし、ここでは問わない。

 ちょうど、全国高校野球選手権大会(甲子園)の各都道府県「予選」が行われている。高校野球の地域「予選」などを見ていると、5千人~1万人収容の野球場ならざらにある。

 ところが、Jリーグに使えるサッカー(フットボール)専用スタジアムを建設しようとなると、いつも、いろいろ行政サイドから厳しい条件が課せられてしまう。


 これには大いに不満である。

 そこで、新国立競技場のオリンピック後の利用に、日本サッカー界にどこまで関わっていけるかは、日本のサッカーにおけるスタジアム文化の「天王山」になるだろう……などと勝手に想定していた。そして、だから、これには失敗したかな……などとも思ってきた。


 仮に、JFAが新国立競技場の運営を担うとなれば、今後の状況もまた変わってくるのであろうか。

 それならそれで、スタジアムの大規模な改修は難しいとして、しかし、陸上競技用トラックの内側の最低5レーンくらいは潰して、サッカーのピッチとして十分なスペースを取るくらいの改修はしてほしい。

 そうすれば、音楽関係のイベント(コンサート)にもさほど支障はないだろうし(たぶん)、肝心要のサッカーでの使用にも問題ない。いずれにせよ、これ以上、東京・首都圏に大規模な陸上競技場はいらない。

 つまり、どういうことかというと、ツインタワーがあったころの昔の旧ウェンブリースタジアムを思い出していたのである。

旧ウェンブリースタジアム空撮(1991年)
【旧ウェンブリースタジアム空撮(1991年)】

旧ウェンブリースタジアム内部(1990年)
【旧ウェンブリースタジアム内部(1990年)】

ツインタワー(旧ウェンブリースタジアム)
【ツインタワー(旧ウェンブリースタジアム正面)】

 旧ウェンブリースタジアムも、元々トラックが付いた陸上競技場であり、サッカーの観客にとっては、けして見やすいスタジアムではなかった。

 新国立競技場を我慢して50~60年くらい使って、その後、現在のウェンブリースタジアムのようにサッカー(フットボール)専用の本当に素晴らしいスタジアムを建てる。

 田嶋幸三会長の申し出はそのための政治的な深謀遠慮、「布石」なのだろうか……などという妄想が、一瞬頭をよぎったのであった。

(了)