顔のない大相撲本場所ポスター
 大相撲本場所の宣伝用ポスターは、力士の顔がはっきり写っていないものが多い。
平成24年(2012)9月場所
【平成24年(2012)9月場所】

平成25年(2013)1月場所
【平成25年(2013)1月場所】

平成25年(2013)5月場所
【平成25年(2013)5月場所】

 江戸時代の錦絵(浮世絵)を使ったポスターもある。
花頂山
【本場所ではないがパリ公演のポスターより。雷電(顔)vs.花頂山】

 なぜならば……。ポスターに顔が写った力士が休場したりすると、何かと都合が悪くなるからだという説がある。

 そのルーツは、昭和46年(1971)年11月場所のポスターの写真に起用されながら、その直前、同年10月11日に虫垂炎(盲腸炎)をこじらせて急逝してしまった第51代横綱玉の海正洋だという。「11月場所のポスターは玉の海の土俵入りだったがピントが玉の海ではなく太刀持の二子岳に合っていた」という怪談じみた話まで伝わっている。

中畑清、謎の表紙写真
 文藝春秋のスポーツ雑誌『ナンバー』の1986年9月20日156号は「特集 中畑清」であった。
ナンバー1986年9月20日156号表紙
【『ナンバー』1986年9月20日156号「特集 中畑清」】

 日本プロ野球随一の人気球団だった読売ジャイアンツ(巨人軍)、さらにその人気選手、中畑清。そのカバー(表紙)写真は巨人軍のユニフォーム姿ではなく、なぜか上半身裸でバットを構えた姿(上の写真参照)。ユニフォーム姿でないこと理由として、中畑は巨人軍のトレード要因になっているのではないかとの憶測を呼んだ。当時、彼は球団内で何かと微妙な立場にあったからだ。

 球団の公式カレンダーで、シーズン開幕の4月より前の1~3月の写真に写っている選手が、実はトレード要因なのではないかと邪推されることと同じである。あの時代、巨人軍からトレード=事実上の放出になることは野球選手としてのキャリアを大きく損ねることでもあった。

 幸いにして、中畑清は現役選手としてのキャリアを巨人軍で全うすることができた。くだんのカバー写真に関する深読みは、あるいは下種の勘繰りだったのかもしれない。

 ……と、事ほど左様にプロのスポーツ選手にまつわる広告や本・雑誌のビジュアルは、微妙で難しく、想像あるいは妄想をかきたてるのである。

本田圭佑出場はスポンサーの圧力?
 2017年8月31日、FIFAワールドカップ・ロシア大会アジア最終予選日本vsオーストラリア戦で、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の采配がズバリ当たった日本が2対0でオーストラリアに快勝。W杯本大会出場を確定した。

 アジア最終予選初戦で敗れると、予選を突破できない……とか(日本はUAEに逆転負けしていた)。2006年ドイツW杯以来、日本はオーストラリアに勝っていない……とか。嫌なジンクスばかり事前に聞かされてきたので、これだけの快勝には感激とともに、ある種の意外さをもって人々に受け止められた。

 もうひとつ意外だったのは、この試合に「サッカー日本代表の絶対的なエース」だったはずの本田圭佑をハリルホジッチ監督が出場させなかったことである。

 本田は、2010年南アフリカW杯で活躍するなど、日本サッカーの功労者である。しかし、最近は、選手としての力量が著しく劣化しているだとか、自己中心的で傍若無人の振る舞いが過ぎてチームに悪い影響を与えるだとか……etc. サッカーファンの間からは、もう日本代表から引退するべきだという意見も出てきていた。
本田圭佑を外すべき理由

 ところが本田圭佑は、ロシアW杯に出る気満々である。選手として劣化すればするほど、彼は日本代表の座に固執する。しかも、本田は日本代表チームの中である種の「権力」を握っており、監督や日本サッカー協会も、彼をメンバーから外すことができないのだという「噂」がある。その権力の源泉は、日本代表のスポンサー企業、あるいは電通のような大手広告代理店だと言われている。

 日本サッカー協会には、協会幹部の一部には日本代表のスポンサー企業の意向を忖度(そんたく)する傾向がある、という。日本サッカーのおける本田圭佑の知名度は絶大で、スポンサーが集まりやすい。逆に本田を外すとスポンサーは逃げていく。どんなに本田のパフォーマンスが低下させようと、監督は自(おの)ずと彼を「スポンサー枠」として日本代表のメンバーに選考し、国際試合に起用せざるを得なくなる……。
 ……だから、ハリルホジッチ監督が、W杯本大会出場がかかった肝心の対オーストラリア戦で本田圭佑を途中交代でも出場させなかったことは、意外なこととされた。その大胆な用兵に多くの人が驚き、評価されるとともに、さらなる憶測の呼び水となったのである。

 実際のところ、日本サッカー協会なり、スポンサー企業なりの広告ビジュアルでは、サッカー日本代表の面々はどのように扱われているのか。大雑把に観察してみた。

ファミリーマート
 例えば、コンビニエンスストア「ファミリーマート」のサッカー日本代表応援サイトには、日本代表選手12人(11人ではなく)の中心に金髪の本田圭佑がいる。
ファミリーマート_サッカー日本代表
【ファミリーマートのサッカー日本代表応援サイトより】

 ちなみに前列の中心は、左から香川真司、本田圭佑、長友佑都という一般にも知名度の高い3選手である。劇映画やテレビドラマのスタッフロールで言えば、左から2番手、1番手、3番手の順か。この辺はいかにもスター中心主義で、この3人が日本代表で出場してくれないとスポンサー側としては困るという潜在意識も感じないわけではない。

日本サッカー協会&キリンチャレンジカップ
 キリンとサッカー日本代表(日本サッカー協会)の付き合いは長い。だから、キリンは他の公式スポンサーとは違って、最上位の「オフィシャルパートナー」という位置づけである。日本代表がホームで行う国際親善試合のことを、キリンの冠イベントとして「キリンチャレンジカップ」と呼ぶ。
JFA公式キリン杯広告
【日本サッカー協会キリンチャレンジカップのサイトより】

 画像右上、日本代表選手11人の誰よりも大きく金髪の本田圭佑が、左手を前に伸ばした本田の下に他の10人の選手が配置されている。まるで「絶対的エース」である本田の指揮の下で他の10人の選手も動いているようだ(ヨハン・クライフじゃあるまいし)。

 デザイナーが誰なのかは分からないけれども、この画像はきわめて示唆的だ。それも、日本サッカー協会の公式サイトである。これじゃ、よほどの怪我でもしない限り本田圭佑は日本代表に選考されるだろう……という冷笑的な声も聞こえてくる。

みずほ銀行
 一方で、みずほ銀行のCMから本田圭佑が消えている! つい本田もスポンサーに見限られたか!? こんな噂を聞いたので、大手都市銀行「みずほ銀行」のサッカー日本代表サイトをのぞいてみた。
みずほ銀行_サッカー日本代表
【みずほFGのサイトから】

 確かに本田圭佑の姿はいない。香川真司の姿もない。本田の金髪姿がないとかえって印象的だ。……しかし、右下に「(c)JFA/キリンカップサッカー2016 対ボスニアヘルツェゴビナ代表戦出場時間上位11名(2016.6.3)」とクレジットがついている。

 日付が「6.3」になっているのは間違いで、ユーチューブに掲載されたCMでは「6.7」に修正されている。

 この試合、本田圭佑はけがで欠場していた。みずほ銀行は、この試合でCMを制作することにしたわけだから、広告ビジュアルには本田はいない。

 どの試合の、どんな選手が(例えば出場時間上位11名)広告に登場したのか……という注釈を入れたみずほ銀行の姿勢には感心する。勝手な邪推だが、スポンサー企業が特定の選手の国際試合出場をゴリ押ししているという噂が立つのは、その企業にとってもあまりいい印象がしないだろう。

キリンと再び日本サッカー協会
 同じことは、キリンにも言える。「KIRINサッカー応援の歴史」というページには、円陣を組む日本代表選手の写真のクレジットとして「2015年11月17日〔略〕対カンボジア戦 出場メンバー(c)JFA」というクレジットがついている。
KIRINサッカー応援の歴史
 日本のサッカーが健全な発展をするためには、今後、こうした配慮がますます重要になるのではないか?(追記:上の写真も選手の顔が映っていない)

 大雑把に見てみると、一番ワキが甘いのは、本田圭佑ををビジュアルで一番目立つように扱い、しかも他の選手が本田の指揮下にあるかのようにデザインした、公益財団法人日本サッカー協会のキリンチャレンジカップの広告ではないかと思う。

(了)



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