杉山茂樹氏の問題提起
壊れた時計でも1日2回は正確な時を刻む……。
……などという言い方は明らかに失礼だが、金子達仁氏と並ぶ電波ライター(死語か?)の2トップ(これも死語か?)ともいうべき杉山茂樹氏のメールマガジンである。が、これから紹介するコラムに関しては、そんなにおかしいことは言っていないと思う。
そのための蓋然性(可能性ではなく)を少しでも高めるためには、現時点でどうするべきなのか? W杯本大会でグループリーグ第1シードになるワールドクラスのサッカー超大国との対戦よりも、2番手・3番手の国々との試合経験を積んで手応えをつかんだ方がいいのではないか……という問題提起には、なかなか抵抗できない。
杉山茂樹氏の面白いところは、「日本」と「世界」の二分法ではなく、「世界」の中での「日本」の位置について重層的多面的にアタリを付けて、最終的な成果を上げるためにどうするかを説いているところである。
シギーこと故金野滋氏の功罪
例えば、昔のラグビー日本代表(ジャパン)のことを思い出す。諸般の事情からラグビーは1987年まで世界選手権(ワールドカップ)が行われなかった。それ以前、1970年代~80年代半ばまで、ジャパンはイングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランドあるいはフランス……といったワールドクラスのラグビー一流国とばかり国際試合を行っていた。
ラグビー弱小国の日本がどうしてこんな国々と、次々と試合ができたのか? ……とか、サッカー以上に国際ラグビー界は格式にうるさくて実は日本が対戦した一流国のチームは正規のナショナルチームではなく正規の国際試合でもなかった……とか。こういう話に首を突っ込んでいると話が前に進まなくなるので割愛する。
【金野滋氏が死去:日本ラグビーの地位向上 国際派 84歳】
一方、アジア選手権というのもあるにはあったが、80年代の韓国をのぞいて日本の難敵は存在せず、ジャパンの独走状態が続いた。当時、世界ラグビーの2番手・3番手の国々となると、アルゼンチン、イタリア、ルーマニア、旧ソ連(現在のロシア、ジョージアなど)、カナダ、アメリカ合衆国、トンガ、フィジー、サモア(西サモア)あたりが思い浮かぶ。だが、戦前からのよしみがあるカナダ以外の国とは積極的に交流を行わなかった。
そして、一流国との対戦では、時々善戦、多くは大敗惨敗を繰り返し、日本ラグビーにとってジャパンにとって実になる経験となったかというと何とも微妙である。
華やかな国際交流がアダとなる…第1回ラグビーW杯のジャパン
これが1987年第1回ラグビーW杯(ニュージーランドとオーストラリアの共催)でアダとなる。この辺の事情と批判は、日本ラグビーフットボール協会の公式サイトで、ラグビージャーナリストの永田洋光氏が書いているので、そこから抜粋する。
そして、同格の国々に勝った上で、いざワールドクラスの一流国に挑戦する……日本ラグビーはそういった過程を踏むことがなかった。
サッカー日本代表も、ラグビーのそうした失敗の轍(わだち)を踏まなければいいのだが、と思う。
やっぱり,あの大手広告代理店…ですか???
ところで、今回、2017年11月の日本vsフランス戦、日本vsブラジル戦をマッチメイクしたのは「誰」なのだろう。
この2試合は「いわば興業。お祭り。強化試合と言うより花試合。相手チームに知られた有名選手はどれほどいるか。その数が多ければ多いほど視聴率は上がる。前景気……視聴率……」と杉山茂樹氏は論評している。
こうした見た目の華やかさに走るとなると、またぞろ電通のような大手広告代理店の介在とか、サッカー日本代表のスポンサー企業の意向とか、あらぬ邪推が聞こえてきそうだ。
壊れた時計でも1日2回は正確な時を刻む……。
……などという言い方は明らかに失礼だが、金子達仁氏と並ぶ電波ライター(死語か?)の2トップ(これも死語か?)ともいうべき杉山茂樹氏のメールマガジンである。が、これから紹介するコラムに関しては、そんなにおかしいことは言っていないと思う。
2017年09月19日発行サッカー日本代表、現在の「ハリルホジッチ・ジャパン」にいちばん達成してほしいことは、2018年のFIFAワールドカップ・ロシア大会で好成績を上げることである。さしあたっては、4ヶ国総当たりで行われるグループリーグ(1次リーグ)の突破だ。
杉山茂樹のたかがサッカー、されどサッカー。
(348)ブラジルやフランスと親善試合を戦うよりも大事なこと
10月と11月。日本代表は立て続けに親善試合を行う。10月がハイチとニュージーランド。11月はフランスとブラジルになりそうだとか。
ハリルジャパンがこれまで戦った親善試合の数はわずかに8。過去に比べて異常なほど少ない。ジーコジャパン時代は年平均9試合。岡田ジャパン、ザックジャパン時代はともに約7試合。それがハリルジャパンは2年半で8試合だ。年平均3試合に満たない。それにこれから戦う5試合を追加しても、少ないという事実に変わりはない。
アウェー戦に至っては、現状1試合。テヘランで行われたイラン戦(2015年10月)のみだ。2試合目となる11月のフランス戦で打ち止めになる可能性が高い。これはハリルホジッチの問題ではなく協会の問題だ。マッチメーク能力に問題ありと言いたくなる。
とはいえ、対ブラジル、対フランスと聞けば、そうした批判は生まれにくい。報道も、腕試しには願ってもない機会、これ以上は望めない相手と、両国との対戦を大歓迎する声が大勢を占めている。だが、それは本当に喜ぶべき話しだろうか。
ブラジル、フランスは、W杯本大会で第1シードに属する優勝候補だ。グループリーグを戦う4チームの中では最強の相手。一方の日本は4チームの中では3番目、いや今回は4番目だろう。
日本が番狂わせを狙う対象は、現実的に考えて2番目のチームだ。ブラジル、フランスは、彼らに本番で1度勝とうと思えば、最低でも10試合は費やさなければならない相手だ。
日本のライバルは3番手。番狂わせを狙う相手は2番手。前回ブラジルW杯に置き換えれば、コートジボワールでありギリシャだ。
このクラスの相手を向こうに回し、どんな戦いができるか。その手応えが欲しい。W杯アジア予選で戦った相手は、言ってみれば4番手以下だ。5番手か6番手。10月に対戦するハイチ、ニュージーランドもそこに属する。敗戦は許されない格下だ。ところが、翌11月になると、今度はいきなり1番手と対戦する。2番、3番とはいったい、いつ戦うのか。番狂わせのシナリオは見えていない。
チュニジア、ウズベキスタン、イラク、イラン、ブルガリア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、オマーン、シリア。これは、ハリルジャパンがこれまで戦った8試合の内訳だが、本番までに戦いたいのは、ブルガリア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、チュニジアだ。それらとのアウェー戦の方が、フランス戦、ブラジル戦より現実的だ。
ブラジル戦、フランス戦はいわば興業。お祭り。強化試合と言うより花試合だ。相手チームに知られた有名選手はどれほどいるか。その数が多ければ多いほど視聴率は上がる。同等あるいは日本より少し強いチームには、そうした選手は多くいない。それでは前景気は煽れない。視聴率……〔続きは有料〕
そのための蓋然性(可能性ではなく)を少しでも高めるためには、現時点でどうするべきなのか? W杯本大会でグループリーグ第1シードになるワールドクラスのサッカー超大国との対戦よりも、2番手・3番手の国々との試合経験を積んで手応えをつかんだ方がいいのではないか……という問題提起には、なかなか抵抗できない。
杉山茂樹氏の面白いところは、「日本」と「世界」の二分法ではなく、「世界」の中での「日本」の位置について重層的多面的にアタリを付けて、最終的な成果を上げるためにどうするかを説いているところである。
- 参照:玉木正之「日本のサッカーの弱点は…?」
- 参照:日本が「世界」に勝てないのは坊やだからさ?
シギーこと故金野滋氏の功罪
例えば、昔のラグビー日本代表(ジャパン)のことを思い出す。諸般の事情からラグビーは1987年まで世界選手権(ワールドカップ)が行われなかった。それ以前、1970年代~80年代半ばまで、ジャパンはイングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランドあるいはフランス……といったワールドクラスのラグビー一流国とばかり国際試合を行っていた。
ラグビー弱小国の日本がどうしてこんな国々と、次々と試合ができたのか? ……とか、サッカー以上に国際ラグビー界は格式にうるさくて実は日本が対戦した一流国のチームは正規のナショナルチームではなく正規の国際試合でもなかった……とか。こういう話に首を突っ込んでいると話が前に進まなくなるので割愛する。
【金野滋氏が死去:日本ラグビーの地位向上 国際派 84歳】
一方、アジア選手権というのもあるにはあったが、80年代の韓国をのぞいて日本の難敵は存在せず、ジャパンの独走状態が続いた。当時、世界ラグビーの2番手・3番手の国々となると、アルゼンチン、イタリア、ルーマニア、旧ソ連(現在のロシア、ジョージアなど)、カナダ、アメリカ合衆国、トンガ、フィジー、サモア(西サモア)あたりが思い浮かぶ。だが、戦前からのよしみがあるカナダ以外の国とは積極的に交流を行わなかった。
そして、一流国との対戦では、時々善戦、多くは大敗惨敗を繰り返し、日本ラグビーにとってジャパンにとって実になる経験となったかというと何とも微妙である。
華やかな国際交流がアダとなる…第1回ラグビーW杯のジャパン
これが1987年第1回ラグビーW杯(ニュージーランドとオーストラリアの共催)でアダとなる。この辺の事情と批判は、日本ラグビーフットボール協会の公式サイトで、ラグビージャーナリストの永田洋光氏が書いているので、そこから抜粋する。
2015/08/04(火)ジャパンが「身の丈」に合った相手との対戦を重ねていれば、競(せ)った場面での正確なプレースキッカーの存在の重要性などを身に染みて経験できたはずである。第1回ラグビーW杯初戦、対アメリカ合衆国戦で負けることはなかったかもしれない。
過去のワールドカップ ‐ 第1回大会 キッカー不在など、課題をさらした日本代表
宮地克実監督・林敏之主将の体制で大会に臨んだ日本代表は、予選でアメリカ〔合衆国〕、イングランド、オーストラリアの順に対戦。大会前には「アメリカには勝って当然」とか「イングランドには相性がいい」といった発言がメディアに躍った。
しかし、初戦のアメリカ戦ではトライ数が3―3と同数ながらトライ後のゴールキックがことごとく不成功。PGも、7本中成功したのは2本のみで18―21と競り負けた。プレースキックの拙さ、安易なディフェンスミスからの失点など、W杯という真剣勝負の恐ろしさを体感したのが、このアメリカ戦だった。
【記念すべき第1回W杯の初戦、日本は米国に惜敗した】
続くイングランド戦では……イングランドの猛攻に為す術もなく8トライを奪われて7―60と完敗。出発前の壮行試合で東京社会人を相手に力づくのトライを積み重ねたチームは、本気のイングランドの力業には為す術もなかった。
〔最終戦の対オーストラリア戦では〕日本は終始前に出るタックルと果敢なボール展開でオーストラリアを苦しめたが、それでも力の差は埋められず、終了間際に2トライを奪われて、23―42で試合を終えた。
それまで“親善試合”でしか世界各国と交流してこなかった日本にとって、世界の本当の強さ、パワーを体感して、厳しい教訓を得られたのが第1回W杯の収穫だった。Text by Hiromitsu Nagata〔永田洋光〕
そして、同格の国々に勝った上で、いざワールドクラスの一流国に挑戦する……日本ラグビーはそういった過程を踏むことがなかった。
サッカー日本代表も、ラグビーのそうした失敗の轍(わだち)を踏まなければいいのだが、と思う。
やっぱり,あの大手広告代理店…ですか???
ところで、今回、2017年11月の日本vsフランス戦、日本vsブラジル戦をマッチメイクしたのは「誰」なのだろう。
この2試合は「いわば興業。お祭り。強化試合と言うより花試合。相手チームに知られた有名選手はどれほどいるか。その数が多ければ多いほど視聴率は上がる。前景気……視聴率……」と杉山茂樹氏は論評している。
こうした見た目の華やかさに走るとなると、またぞろ電通のような大手広告代理店の介在とか、サッカー日本代表のスポンサー企業の意向とか、あらぬ邪推が聞こえてきそうだ。
(了)