読者に従順を強いる抑圧的なスポーツライター玉木正之
 大化の改新のきっかけとなった古代日本の球技スポーツは、よく知られている蹴鞠(けまり)ではない。スティックを使ったホッケーやポロに近い球技である……と、スポーツライター玉木正之氏は繰り返し主張してきた。当ブログは、2010年9月、「玉木さんがそう唱える理由、根拠は何ですか?」と質問のメールを送ったことがある。

 玉木氏からはすぐに返事をいただいた。だが、その答えには納得できないまま、いつしかそんなやり取りがあったことは忘れていた。すると玉木氏は、2012年2月になって、まるでこちらが「誤解」だらけで「的外れ」な質問をしてきたかのように自身のホームページで勝手に公開してしまった。
読者からの質問への回答1
 これには大いに不満であったので、2012年10月、玉木正之氏への反論と再質問をメールで試みた。以下はその続きである。

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 〔承前〕玉木さんのご回答は、ただただ持説を鸚鵡〔おうむ〕返しに唱えているにすぎません。それなのに当方を一方的に「的外れ」「誤解」とされるのは非常に心外です。〔玉木氏の回答は論証ではなく折伏である〕

 玉木正之が言っているから正しい……これでは通りません。玉木さんは、『スポーツとは何か』だったかで日本のアスリートは監督・コーチに従順であるなどと批判的に書いていました。

 翻って、玉木正之の読者は著者に従順でなければならないのでしょうか? 玉木さんの元で学んだ学生・院生または玉木氏のスポーツライター養成塾の塾生からは、今まで何の疑問も出なかったのでしょうか。

文化本質主義者としてのスポーツライター玉木正之
 そういえば、ある席で一緒になった牛木素吉郎さんから「玉木サンは持説を一方的に声高にまくしたてる〔ばかりな〕ので困った」というお話を聞いたことを思い出しました。

 一連の経緯を見て考えたことですが……。

 玉木さんは、自分が正しいと思ったことを盲信して、見解の相違について考えたり、丁寧に批判したりすることが出来ないのではないか?

 また、玉木さんは、現代思想・文芸批評的なスポーツ論・スポーツ観に傾倒していたせいか、地道な論証・実証を軽んじているのではないか?〔唐突にこんな話を持ち出したが、そのうち触れる日が来るだろう〕

 しかし、それでは異見の持ち主を説得することはできません。

 そしてもう一つ、玉木さんは、日本の歴史・文化・伝統……の中にサッカーを受け入れる素地がなかったという方向に話を持っていきたがっているのではないか?〔実はこれが玉木氏の本音なのである〕

 私自身は、〔大化の改新のきっかけとなった古代日本の球技は〕蹴鞠でも毬杖〔スティックを使ったホッケー風球技〕でもかまわないし、一国の国民的スポーツがそのような理由で決まることはないと思います。

 ただ、中沢新一氏の説……というより思いつき発言に便乗するにしても、本当に妥当な見解かきちんと自己検証されていないのではないでしょうか?〔唐突に「中沢新一氏の説」が出てきたが、これについては後でじっくりと採り上げます〕

知的誠実さのないスポーツライター玉木正之
 当方の質問にお返事をいただいたことは大変誠実なものであり、恐懼〔きょうく〕するものです。しかし、肝心のご回答の内容には知的誠実さを感じませんでした。

 あらためて玉木さんに質問します。

 玉木さんの持説に、「『日本書紀』皇極天皇紀にある、大化改新の発端となった中大兄皇子と中臣鎌足の出会いのきっかけとなった《打毬》とは、蹴鞠(≒サッカー)ではなく、毬杖(ぎっちょう≒ホッケー)である」というものがあります。

 (1)玉木さんが、どこかでこの件にまつわる考証を書いている媒体(紙・ネットなど)ありましたら、ぜひとも教えてください。

 (2)それがないのであれば、どこかで表明してほしいと思います。ぜひとも教えてください。

 以上に加えて質問します。

 (3)法興寺の槻の樹の下で行った球技が、騎乗で行う「打毬」(ポロの原形)ではなく、徒歩で行う「毬杖」(ホッケーの原形)である根拠について、玉木さんの見解を教えてください。さすがに騎乗で「而候皮鞋随毬脱落(皮鞋の毬の随〈まま〉脱け落つるを候〈まも〉りて)」は苦しいのではないかと思います。〔玉木氏が騎乗の競技ではないとする考証もやっていないための追撃的質問〕

 もう一つ質問します。

 (4)玉木さんはNHKの番組審議委員でもあったはずです。……が、NHKのスペシャル大河ドラマ「坂の上の雲」第一部で、香川照之演じるところの正岡子規が野球をするシーンについて、玉木さんが何か言及している場面をネット検索では見つけることができません。玉木さんが、どこかでこの件にまつわる感想・意見を書いている媒体(紙・ネットなど)ありましたら、ぜひとも教えてください。ないのであれば、それはなぜなのでしょうか? 玉木さんに都合が悪いことが何かあるのでしょうか?

 〔前段落についても、おいおい詳しく触れるでしょう〕

 ぜひとも、玉木さんの見解を知りたいのです。

 以上、お手数ですがよろしくお願いします。 敬具

 2012年10月8日体育の日  gazinsai拝

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読者の質問に何も答えてくれないスポーツライター玉木正之
 反論と再質問のメールは以上の通りである。こうしてあらためて振り返ってみると「誤解」だらけで「的外れ」なことをやってきたのは、むしろ玉木正之氏の方である。

 当方の知りたいことに玉木氏は何も答えてくれなかった。もしくは何も答えられなかった。

 あれからずいぶん時間が経つが、玉木正之氏から回答はない。

 最初の回答はかなり的外れ……というか、当方の文章がよく読まれていないために生じた「誤解」に近いモノなので、「誤解」を解くために反論と再質問の返信を書いたところが、それに対する返事はナシ。当方の意図に納得してくれたのかどうか……。この問題はサッカーファンの公益に関わることと思い、ここに公開しました。

 玉木氏の2度目の回答は来るのか? その日が来ることを期待しないで待っている(爆)

(つづく)