いささか旧聞に属する話だが、年末恒例「『現代用語の基礎知識』選 ユーキャン 新語・流行語大賞」の野球用語ゴリ押しが酷い。
2023年の年間大賞は「アレ(A.R.E.)」、2022年は「村神様」、2021年は「リアル二刀流/ショータイム」、みな野球の言葉である。大して流行ったとは思えない野球用語が3年連続で年間大賞に選ばれたことに、野球ファン以外の多くの人々が辟易しているのである。
これは審査員で野球ファンの漫画家・やくみつるの影響が大であると見なされている。また審査員の平均年齢が60歳を超えていることも影響していると考えられている。
- 参照:女性自身「流行語大賞にまた野球用語で〈流行った感ない〉と辟易…有名審査員の平均年齢は60歳超え,〈Netflixを知らない〉やくみつるも」(2023/12/02)https://jisin.jp/entertainment/entertainment-news/2266675/
やくみつる(ら)の頭の中は、毎晩のようにプロ野球中継が地上波テレビで放送され、20~30%もの視聴率(世帯視聴率)を取り、日本において野球が絶対的なスポーツの王様だった「昭和」(~1989年)の時代から変わっていない。
しかし、年々、日本においても野球の人気は下がり、競技人口も減っている。地上波テレビのプロ野球中継が視聴率が下がり続け、ついにはほとんど放送されなくなった。たまに読売ジャイアンツ(巨人軍)と関係の深い日本テレビがプロ野球中継(巨人戦)を放送することがあるが、視聴率は非常に低い。
国会の議席で譬(たと)えれば、もはや野球は単独過半数を取れなくなっているのである。その分、日本人のスポーツの好みはサッカーやバスケットボールなどに「多様化」している。
もうすでに野球が「国民的な了解事項」ではなくなっているところに、一方的に野球用語を流行語大賞の年間大賞にゴリ押ししても、かえって人々の野球に対する反感を買うだけである。特に野党第一党(?)のサッカーファンからは……。
似た例として、石橋貴明が主催する地上波テレビの「ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ」(フジテレビ系)も野球ゴリ押しが酷く、視聴者に嫌がられているようだ。
- 参照:まいじつ「『細かすぎて伝わらないモノマネ』ゲストに忖度しすぎ? 野球ネタだらけで視聴者ウンザリ〈まったく分かんない〉」(2023.12.18)https://myjitsu.jp/archives/454029
いやいや、違う違う。流行語大賞なんか、1年もたたないうちに「死語」になるのだからあんまり気にするなよ……という野球ファンがいる。
1年もしない内に死後になる流行語大賞なんて気にすんな
— NAKAHAMA featuring.Hero All Call (@PZMQbbbJ5NpkBSk) December 3, 2023
そもそも流行語大賞が野球離れの原因?#広尾晃 でも言わんやろ https://t.co/a79A9qTxGF
だが、これは野球ファンの驕(おご)りである。こうした意見は重要な点を見落としている。
なぜなら、流行語大賞の野球用語は「死語」にはならないからだ。
「『現代用語の基礎知識』選 ユーキャン 新語・流行語大賞」、なるほどすぐに人々の【記憶】から消えるかもしれないが、しかし『現代用語の基礎知識』というそれなりに権威がある年鑑・事典(『広辞苑』ほどの権威ではないかもしれないが)に、今後とも【記録】され続けるからだ。
- 参照:自由国民社「『現代用語の基礎知識』選 ユーキャン 新語・流行語大賞」https://www.jiyu.co.jp/singo/
後世の人が当時の世相を調べようとして『現代用語の基礎知識』を繙(ひもと)いたら本当に流行っていたのかよく分からない「アレ(A.R.E.)」とか、「村神様」とか、「リアル二刀流/ショータイム」とか、本当に流行っていたのかよく分からない野球用語に出くわすのである。
この点は相当な問題である。
大袈裟に言うと『現代用語の基礎知識』は歴史を捏造しているのである。
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